「それじゃあ、心惜しいけど、私は先に行きますね」
「うん、また教室で」
そう言って扉を開けて、周囲を見回して平賀式部は去っていく。扉が閉まると同時に大きな体をこそこそとしてる桶狭間忠国が動き出す。そしてそれを扉越しに透視で見てる野々野足軽である。
とりあえず平賀式部が去ったのを確認して中を確かめようとしてる。けどそれはいつものパターンだ。その前に野々野足軽はさっさとベランダから脱出するだけ。とか思ったけど、なんか今回は素早い。一足で扉に近づいてきた。
「げっ!?」
あまりの速さに野々野足軽は驚いた。今までは慎重に行動してたのに、今回はやけに大胆だ。でもその巨体から信じられないが、音は全くしてない。どういう人生を歩んだら、そんな暗殺者みたいなことができるようになるのか……そして素早く取っ手に手をかけて、音もなく引いた。
そして教室と比べたら狭い部屋に視線を走らせる。
「誰もいない……か」
そう呟く桶狭間忠国。そして目を閉じる。何かを感じてるようなその動作……そしてふと上を見た。そこには天井にへばりついた野々野足軽が……
「気配はあるんだが?」
桶狭間忠国はそう呟いて野々野足軽を見てるはずだが……どうやら見えてないみたいだ。そして諦めたように扉を閉めた。それを確認してから、野々野足軽は地面に落ちた。華麗に着地したかったが、そんな華麗にはできなかった。尻から落ちた。
「いてて……アース、お前」
(あのままだとバレてたでしょう?)
「そうだけど……いや、助かった」
あの時、どうやら野々野足軽はかなりドキドキしてた。実際バレたと思ったみたいだ。けど、バレなかったことに野々野足軽自体が困惑してた。その正体はどうやらアースだったらしい。アースがどうやら何かして野々野足軽を隠してたみたいだ。
「何したんだ? 透明にしたとか?」
(そんな複雑なことはしてないです。ただ意識に干渉しただけです)
そっちの方が複雑そうなんだが……と野々野足軽は思った。