「野乃野くん……」
一体いつまでそうやってたのだろうか? 野乃野足軽はただ椅子に座って下を向いていた。いつの間にか保健医とかも返ってきてたらしい。でも野乃野足軽は全くもって気づかなかった。
もちろんだけど保健医は野乃野足軽に声をかけてた。けどなんど声をかけても、揺すっても反応しなかった野乃野足軽にあきれて仕事をしつつ、部屋に居たが、呼び出されて出ていってのだ。
だから再び保健室には二人になってた。平賀式部の隣のベッドの仕切りが仕切られてて中が見えないようになってるが……それを気にする人はいない。野乃野足軽もそれに保健医だってそれには触れてない。
そして目覚めた平賀式部は気づいてさえいないだろう。
「平賀さん……目覚めたんだ。良かった」
そういった野乃野足軽の顔を見て、なんか一気に顔が沸騰した様に赤くなる平賀式部。それを感じ取った平賀式部はガバっと毛布をかぶった。
「平賀さん!?」
「えっと……その……聞きたいことがあるんだけど……」
そう言ってちょっとだけ毛布から顔をだす平賀式部。その姿が小動物感があって、野乃野足軽の脳内は「可愛すぎかよ」で埋まってた。どうやら可愛いは悩みとかなんか全てを吹き飛ばしてくれるらしい。
さっきまでうつむいて死んだように……燃え尽きた灰のようになってた野乃野足軽が平賀式部の一挙手一投足で自分に血肉が通ってる事をおもいだしてた。
「私達ってその……付き合ってたり……する?」
どうやら平賀式部にはあの時の事が夢か現実なのか、良くわかってないみたいだ。夢のような気もするし、現実だったような気もしてるって感じなんだろう。でも平賀式部の感じ的に、やっちまったかも……的な感がうかがえる。現実よりの夢? というよりも、夢であってほしい……と思ってるのかもしれない。
「本当の事……教えて」
沈黙が続いてたから、平賀式部は野乃野足軽が言いにくいんだと思ったんだろう。嘘はつかないで……と言ってきた。夢であってほしい……けど、どこかに平賀式部も夢じゃないほうが良いことも含んでるのかもしれない。
野乃野足軽もどういったらいいのか、ずっと考えてた。でもその平賀式部の言葉で意を決した。何回か大きく深呼吸をして心を落ち着ける。もちろん落ち着くわけないが、落ち着けようと必死だ。そして口を開く。
「ごめん……俺たち、付き合うことになった」
野乃野足軽は申し訳無さそうにそういった。