「そうか……教会が言ってきたか」
そんなふうに一人の渋めのおじさんが後ろ手を組み、窓から外を見ながらそんな事をいってる。後ろには彼よりは年若いが壮年と呼べる面々が揃って、片膝をついてた。
それを外から見てるのはもちろんだけど、私のドローンである。それぞれの街がどっちにつく気なのか、それを確かめるための情報収集を私は早速してる。この世界にはドローンなんて物は存在してないからね。あからさまに目の前を飛んでたら流石に警戒するだろが、そこそこ離れてたら誰も気にもしない。情報収集し放題である。
ここは『バンバラバラミヤ』という街である。実際、そんな重要度的にはサーザインシャインインラの足元にも及ばない街である。まあけど、すでに街はここ最近で2つも消えてるからね。ジャルバジャルは都市核を取り戻したから復活できたが、それでも2つ消えてる。だから実際、人の領域ってやつは確実に減ってるわけで……それでいうと、今やこの世界に重要でない街なんてのは一つもない……ともいえる。
「王はたち上がられた。それに教会の蛮行！ それを許す事はできません！」
そんなふうに膝をついてる部下だろう、一人がそういった。でも……
「教会に見捨てられたらバンバラバラミヤは立ち行かなくなるぞ！ それは我らだけの問題ではない。ここに住む者たちすべてが死ぬことになるのだ！」
そんなふうに言うやつもいる。まあはっきり言って、この言い合い、残ってる街ではどこでもやってる。それに大体、自分だけじゃなく周りも困るって言うやつほど、自分のことしか考えてないっていうね。実際、あの人の事全く知らないし、本心かもしれないけど。
でも……今の状況でまだ教会を頼ろうとしてる時点で、自分の事しか考えてないと思う。そういうやつほど、教会とのつながりが強いんだよね。サーザインシャインインラはそれこそ上層部全部教会側だったけど、普通の街なら、全部が全部教会に染まってる……っていうほうが珍しい。なにせ教会は確かに沢山便利物をよこしてるが、それ相応の対価を求めてるからね。それも結構強欲に……ね。
だからそんな教会にいやいやしてる奴だって普通にいる。サーザインシャインインラはそれこそ重要だったからこそ、教会も飴を多く与えてたんだろう。だから上層部全部そっちがわ……なんて事になったが、そこそこの付き合いなら、上層部の数人だけと繋がってたほうがいいのかもしれない。
だからここでまだ『教会』とのつながりを説くようなやつは……十中八九教会側の人間……と見ていい。甘い汁を吸ってたやつだ。でも実際、今までこの世界の人達は教会のお陰で成り立ってきた。それをいきなり切る……なんてのは難しいのもわかってる。不安なのはしょうがない。
だからここで、私の役目だ。技術は私が提供してあげよう。でも他の街を取り込めるかは、王様しだい。
私は各地に出張らせてたドローンを使って、王様の姿を空に投影する。
