uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

ある日、超能力が目覚めた件 437P

「いい! 夕食まで部屋でしっかり勉強してるのよ。すぐに呼びに来るからね」
「……はい」
 
 強く言われて、結局野々野小頭は自身の部屋へと続く階段を上がる。この家には外に出る導線として、表の玄関とキッチン横の裏口がある。けどどっちも母親は気にしてるだろう。実際キッチンの近くの裏口はそもそもが使えない。なにせ母親がそこにいるんだからもしも外に出るとしたら普通なら玄関一択になる。
 けど母親はリビングとかの扉を開けて、しっかりと音とかを気にするようだ。階段から降りるとき、どんなに気を付けても「ギシ、ギシ」と鳴ってしまう。それに玄関の扉だってガチャ……という音がする。実際どっちにもそんなに大きくはない。テレビの音とかでかき消される程度だ。
 けど気にしてたらちゃんと聞こえるくらいの音量ではある。扉もあけられてたらよりちゃんと聞こえるだろう。野々野小頭は階段を上がりきってスマホを見た。それは知り合った大学生たち……大川左之助たちのチャンネルである。今やぐんぐんと視聴者が増えてるそのチャンネルは、どんなテレビよりもまともに映像を流し続けてくれてる。だからこそ、どんな状況なのか……それを知るためにも誰もが彼らのチャンネルへと押し寄せてる状況だ。
 なにせ彼等以外はもうほぼ映像がない状態になってる。きっと現場まで来てたんだろうけど、おかしくなってしまってどこもかしこも映像を伝えることが出来なくなってしまったんだろう。大手の地上波のテレビ局とかなら、何回も人を送れそうだけど……それをしてないところをみるに、誰もが現場に行くのを拒否してるのかもしれない。
 どうやらテレビのジャーナリズムというのは死んでるらしい。真実をなんとしても放送するんだ!! とかいう心意気……それはなくなってるという事だ。けどそんなのはこの国に住んでる人たちならみんなもうわかってる事だろう。
 
 ネットが普及してテレビから情報の取得手段が取って代わられたくらいから、テレビの不正が取り沙汰されることが多くなった。それで真実に目覚めた人たちがたくさんいた。昔はテレビは真実を伝えてると思ってた。けどそんな事はなく、真実を求めてネットに行く人達がいっぱいいる中でも、テレビはどうやら何も変わってない。
 まだ国民を馬鹿だと思ってるらしい。嘘、捏造……そんな事ばっかりやってたから、沢山いるテレビ局の中には「嘘でいい」という考えが広まって自身を危険にさらしてまで真実を放送しようって気概はどこのテレビ局にもなくなったらしい。むしろ動画サイトの方なら大川左之助たち以外にも今も生放送をしようとしてる人たちが増えてる。
 
 もちろんその人たちは面白がって……というのが大半だろう。けどそれでも危険を承知でやってるのである。よっぽどネットの方が真実があると皆思うだろう。
 
「うわ……」
 
 そんな声が野々野小頭はでた。なにせ……だ。なにせ今まさに動画の向こうではパトカーが爆発してた。どうしてそうなったのか……は流石に野々野小頭にはわかんない。けどそんな事になってるのは確かだ。そしてその音とかは動画の中だけではなく、リアルの方でも遠くの方からその音が聞こえてた。わずかに振動したような感じもした。
 どんどんとサイレンの音は増えていってる。