(成長期……ですね)
「は?」
野々野足軽は思わず声を出してそういった。いつもアースと話すときは頭の中だけで会話をしてる。けど成長期? そのあまりにも……そう、あまりにもなんか身近な言葉をアースが言ったから呆然としたみたいだ。
なにかもっと大層なことが起きてるのか? とか野々野足軽は思ってたのかもしれない。それこそ最近は今までにないくらいに他人に影響を及ぼすほどの力を行使してた。それによって何人かの人生を変えた野々野足軽だ。
もしかしたら自分は大丈夫だと思ってたが、やっぱりなにか心にダメージというか、罪悪感というか、そういうのが野々野足軽にもあったのかもしれない。なにせ心の傷というか、そういうダメージは本人にだってわかりづらいものだろう。成長期といってるから、ダメージというか負担なのかもしれないが……
(わかってますか? ここ数日で、その力は飛躍的に高まってますよ)
(そう……なのか?)
とりあえず部屋を綺麗にして、椅子に腰かけて野々野足軽は手のひらをみる。そしてそこに力をあつめる。簡単に集まる力。確かに前はこのくらいでも全身から引っ張ってくるかのように……それこそ濡れたぞうきんを絞るように集めてたかもしれない――と野々野足軽はおもった。今や簡単にやってるから初期の感覚って奴を思い出すのは難しい。
(傍から見たらよくわかります。以前はそれこそわずかに体から漏れ出る程度の力でしたが、今は常にその体以上の力が渦巻いてる)
(そうなのか?)
(はい)
どうやら野々野足軽はアースの言葉を信じるなら、飛躍的にその力を高めてるらしい。確かに最初は小石だって浮かせるのが難しかったが、今やトラックさえも持ち上げられるようになってる。それをこの短期間で――だ。もしもそれを肉体で考えてみると……最初はそれこそ小さなダンベルを持ち上げることもできなかったのに、わずかな筋トレでトラックさえも持ち上げられるようになった――というものなのかもしれない。
そう考えると『異常』
(もしもそんな風に肉体事態が強化されてたら、寝てるときに寝返りうったり、ちょっと足で何か蹴ったりするだけでも周囲に被害がでそうだよな……それが力によって起きた……と)
(そういう事ですね)
(どうしたらいいんだ?)
これは不味い……と野々野足軽は思った。なにせもしも知らないうちにまたこんなことが起きたらまずいし、さらに言うと、実はこんな程度で次も済む……とは思えなかったからだ。これからもきっと力は強くなっていくだろう。それを野々野足軽だって望んでる。
なら成長はしていく。どこかで野々野足軽の「力」の成長は止まるかもしれない。けどそれがどこなのかは野々野足軽にだってわからないんだ。それなのに、寝てる間に寝返りうつように力が発動してしまうなんてことになったらとても困る。
これは今一番可及的速やかに解決しなくちゃいけない案件だ――と野々野足軽は判断した。