「やめろ! あんなもの、役になんて経つわけないだろ!」
そういってミカン氏が出してきたダウジングの棒を払い落としたチャブ氏。むなしく響いて地面に落ちたそれは、なんとなく悲しい音に聞こえた……かもしれない。
実際、彼……チャブ氏のダウジングへのこだわりを知ってる大人たちはそんな風に聞こえてた。けど、野々野足軽も野々野小頭も、そんなこだわりなんてしらないから、兄妹達はおっさんたちが何でそんなにもめてるのか、よくわかってない。いや、まだこういうオタク的なこだわりみたいなのに理解がある野々野足軽はいろいろとあるんだろうなってのがわかってる。
それに……だ。それにチャブ氏が自信というか、自分のアイデンティティであるダウジングというのに見切りをつけたのはそれこそ野々野足軽が原因だとわかってるから、静かに見守っている。というか……
(やっぱり何かしらのフォローが必要か?)
とかちょっと思案してた。けど野々野小頭は――
(本物とかなんとか、いい歳して……男って何歳になっても変わんないの? これじゃあクラスの男子と一緒じゃん)
――とか思ってた。どうやら野々野小頭のクラスの男子にはまだまだ中二病から抜け出してない奴がいるようだ。
「いっただろ……俺の話してたことは全部創作なんだよ。見栄張ったんだよ! だから俺に期待したって無駄だ」
そういって背中を向けてしまうチャブ氏。お仲間のおっさんたちが何かを言っても、彼は反応しない。このままじゃまずいと思った野々野足軽はこういった。
「えっと、アンゴラさんにはその……なにか不思議な力があるんですか?」
「それは……」
「ああ、そいつは本物だよ。だからそいつに頼りな」
横から口をはさんできたチャブ氏はやけにアンゴラ氏を持ち上げる。妬みなのかひがみなのか……いや、ただ単に憧れ……なのかもしれない。
「本物……なら一回やってみては?」
「いや、俺はダウジングは一回も……」
「でも、このままじゃ草陰さんを見つけるなんて……一刻を争うかもしれないんですよ?」
そういいつつ、野々野足軽は落ちてたダウジングの棒を拾いに行く。そして二つの棒を拾って、アンゴラ氏の前へともっていく。けどなかなか彼は受け取らない。その視線がちらちらチャブ氏の方に向いてるのを野々野足軽は見逃さない。
きっと遠慮してるんだろう。そういうの仲間想いで良い思うが、野々野足軽も引き下がるなんてことはしない。なにせ草陰草案の事がかかってる……というのは建前だ。もちろん一刻も早く発見してあげなくては……とは思ってる。
でもちゃんと手順が必要だとも思ってるのだ。
「やってみてダメだったら、みんなで考えたらいいじゃないですか。今はただ草陰さんを早く見つけてあげることが先決じゃないですか? 力ってやつが俺にはよくわかんないですけど……そういうのって困った人を助けたりするために有ったりするんじゃないんですか?」
とりあえず野々野足軽はどっかのヒーローが言ってそうなことを言って発破をかけてみる。するとアンゴラ氏は今の言葉が響いたのか、ダウジングの棒を掴んでくれた。
「わかった。やってみよう」