「それにしても、貴方もその……力を?」
「何ができるんですか?」
「あはは、私は彼女のようにすごいことは出来ないよ。それこそ傷を治せるなんてそんな奇跡のような事は全くだ」
そう言って自身の力は大したことはない……と謙遜するアンゴラ氏。でも三人に取っては、どんな力であろうと『力』があるというだけで尊敬の対象になるんだろう。三人とも成人してるだろうに、その目はとてもキラキラとした少年のそれになってた。
「草陰さんが回復的な力だったのに対して、アンゴラ氏はサイコキネシス的な、そんな力なんですか?」
「いや……それが……」
なんだか歯切れが悪いアンゴラ氏。頭をポリポリとかいて、ちょっといいにくそうにしてる。
「俺の力はまだ、よくわかんないだ」
「よくわからない?」
「でも力なんてよくわからないものでは?」
大川左之助と朝日蔵三がそんなコトをいう。野々野小頭はすでに彼らの会話に混ざるつもりはないのか、端っこにあった椅子に座って我関せずしてる。まあそれをやれるのも彼ら三人が無害と判断したってことだろう。
少なくとも彼らなら草陰草案に変な事はしないだろうって思ってる。そしてそうなると野々野小頭は『力』なんかには興味ないから、スマホでお気にいりの動画でもみることにしたらい。
「確かによくわからないものだと思ってるけど、自分の力を把握したいのは当然だろう? でもどうやら、俺の力は不安定なんだ」
「「「不安定?」」」
どういうことか、三人はわかってない。でも草陰草案がそれに加わってないのを見るにもしかしたら普段からアンゴラ氏達とラインをしてる草陰草案は知ってたのかもしれない。
「ああ、たしかに今はこうやって紋を刻んだ石を動かせてるが、出来ないときも有ってね」
「なるほど、不安定ってのはそういうことですか」
「そうなんだ。だから俺はYou Tubeに出るとかは向かない」
「まあそもそもが彼女だけの予定でしたし……実際本物が来ると自分たちも思ってなかったっていうか……」
「大体、そういう連絡をしてくる奴らってオレたちのファンで、目当ては蔵三なんだよな。送ってきた映像はだいたいフェイクだし」
「そうなのか」
「そんなの許せません! オカルトをばかにするような行為じゃん!!」
大川左之助たちの言葉に草陰草案とアンゴラ氏はそれぞれの反応をしてる。アンゴラ氏は大人らしい反応だ。だから草陰草案も中学生らしい反応といえばそうだろう。でもそこには私情も多大に入ってると思われる。だって自分自身に『力』が芽生えたから、力を餌にイケメンに近づこうとするなんて許せないってことだろう。
そう言った会話をしつつ、実際彼らは『どうしようか?』というのを話し合っていく。それは力を全世界に向けて流すのかどうか……でもなかなか結論は出ない。