向かう拳と、向けられる拳。拳が合わさった瞬間、鋭い音が何回も聞こえた。そして……何が起こったかというと、ぶつかった拳と拳。その瞬間に、自分の拳に合わさった敵の腕が切断されたのだ。
それはどう考えても打撃の一撃じゃない。でも確かに自分は拳を向けてた。それは間違いない。
それこそ向こうの腕の一撃よりもありえないことが起こってるといって言い。向こうは一撃が一撃ではない。体の内部……いや、その対象の内部から破壊が起こる一撃だ。
向こうの拳だって特殊だ。でもむこうの方がまだ理解できる範疇かもしれない。だってあれは拳に振動を混ぜてる。だからこそ、内部にまで浸透して内部破壊を起こすという仕組みだ。そこには科学的な根拠があるんだろう。
でも自分の場合は拳を向けて、相手を切ってる。もう意味がわからない事だろう。刃物なんてもってない。けど、自分の拳は鋭利な刃物になってるんだ。
打撃だと思ったら、斬撃だった――という質の違う攻撃。それによって、よって? なのかはわからないが、上手く切れた。実際、あの腕の装甲は斬撃だろうと打撃だろうと質を変えてる訳じゃないと思う。どっちにも比較的に有効に作用してるだろう。
でも普通は打撃だと思ってて斬撃がきたら、びっくりするし、不意を突けるものだ。腕は機械だからびっくりはしないだろう。ただ淡々とその事実をデータとして受け止めるだけ。だからリアクション的にはない。
それに……
(やっぱり治るか!)
自己再生。機械だから自己修復と言った方が良いかもしれない。それによって綺麗に切れてた傷口が修復してすぐに攻撃を続けて来た。それに……だ。
実は拳は同時に当たってるわけで、こっちの腕にだって向こうの拳の攻撃はちゃんと通ってる。
なので本当なら自分の腕が弾け飛ぶはず。でもそれはおこらない。なぜか。だって仕掛けはわかってるのだ。ならば、対策は出来る。
(上手くいってよかったっすよ!)
それはノアの声。そして……
『行きましょう。今の私達なら通じます』
聖剣の声。自分は一人で戦ってるわけじゃない。勿論ミレナパウスさんやアイ殿という二人は当然として、自分の中にはもう二人いるんだ。
心強い。聖剣は砕けたが、新たな形態になってる。それこそ
一心同体と言える形態だ。