uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 318

「あれ――」
「あねう――」
 
 俺はそれなりの声を出そうとした二人の口を押さえつける。確かに今は認識疎外を発動させてこちらの存在を感知されにくくなってる……とは言え、注目を浴びるような行動をすれば、それは例外だ。
 わざわざ注目を浴びようとすれば、勿論ちゃん注目されてしまう。まあなにせ俺の魔法では完全に姿を消してる訳じゃない。実は見えてるが、頭がそうだと認識してないだけだからな。
もっというと、見えてるが別に注目に値しないみたいな認識で見えてる……みたいな? 実際は俺の力ならば、完全に姿を隠す……くらいはできる。
 
 だが魔法とは高度なを事をしようとするとなると、その残滓というのが残りやすくなるし、熟練の使い手にはばれやすくなる。まあこの世界の魔法の使い手にバレる様なヘマはしないつもりだが……
 でもそれでも、このくらいがちょうどいいんでは? と思ったんだ。なにせここは協会連中の総本山だからな。あんまり強力な魔法を使うとそれ自体を察知されかねないってのがある。
 だから見えてるけど、素通りされて都合がいい範囲で認識疎外なのだ。
 
「お二人とも、注目を集めるような行動は避けてください」
 
 俺はプライムとアヴァーチェの二人の耳元でそうささやく。二人ともちゃんとコクコクと頷いてくたれた。二人とも物分かりが悪い訳じゃない。寧ろめっちゃ物分かりいい。
 
 けどさっきのはちょっと心が焦ったというかはやっただけだろう。けどこういうのはいつ何時でも気を緩めてはだめなんだ。なにせここは敵の総本山。
 
 きちんと脱出するまで、油断はしてはならない。プライムの奴もしっかりとしてるが、ちょっと子供のようである意味子供らしさが残っててよかったがな。
 
 このくらいはちゃんとカバーを俺がやればいいんだ。と言う訳で、さっそく最後の一人を教えてもらう。
 
「あれが姉上です。あの銀髪に赤がちょっと混じったような――で肌も少し浅黒い」
「あれ……か?」
 
 俺はプライムとアヴァーチェが指し示する女の子にあたりをつけた。けど……確信が持てないというか……いやだって……俺はプライムとアヴァーチェの二人を見る。
 
 二人は銀髪にまじりっけは一切ない。それに肌もこの世界には珍しく肌が白いほうだ。
 この世界は太陽が厳しいから、肌が浅黒い人たちが多い。それに髪の色だって、濃い色の人の方が多いんだ。だからこそ、王族は特殊というか、特別な色をしてるな……と思ってた。
 
 でも二人が示す女の子は……確かに髪色はちょっと共通項あるけど……肌の色とか違うし……あれって――
 
(王様……やんちゃしたな)
 
 ――と俺は思った。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 317

 乙女の花園へと入った。それだけでなんかさっきまでまの場所とは雰囲気が……というか匂いが違う感じがする。なんか常にいい匂いがするというかなんというか……
 まあ別にさっきまでいたところ、つまりはアヴァーチェ達がいた場所が臭かった? ――とか言う訳ではもちろんない。そういう事じゃないんだ。そもそもこの世界品質でいえばここはある意味で最高峰な権力者の場所だけあって、ゴミ一つ落ちてないくらいに奇麗ではある。
 奇麗で……そして静謐な場所だ。だから臭いなんてのはあるわけない。ある意味で人は匂いに敏感な生き物だ。いくら見た目奇麗だとしてもそこに悪臭が漂ってれば、人はそこを奇麗だ――なんて思わないだろう。
 けどこの協会内部ではそんな事はありえない。きちんと清掃されてるし見栄を張れる所は手を抜かないみたいな協会の本質が見て取れるからだ。
 
 じゃあ何が変わったかというと、もう性別くらいしかない。住んでる者達の性別で匂いが変わる……というのが実際あるかないかと言われればよくわからないが、実際変わったのは確かだ。まあ普通に考えて、この区画は花がやたら多いから……というのがたぶんその理由だろう。
 男女の境の柱を抜けた俺とプライムとアヴァーチェは進むなか、色とりどり花を見てた。実際ここまであんまり色彩がなかった協会だからだろう。余計に鮮やかに見えてる。
 
「ここは植物が多いのですね」
「たしか育ててると聞いたな。やはりそういうのは女性の方が得意なのかもしれない。色々と花は使う機会が多いからな」
 
 そういうものなのか。ようはこの区画に飾ってある花はここの少女たちがてづから育てた奴を使ってる……という事か。確かに売れそうな……ってそういう事ではないだろう。協会という特性上、花を使う場面があるからここの子供たちに育てさせてるって事なんだろう。
 
 別に男女の境があったからといって、そこから一気に作りが変わった訳じゃない。基本はさっきまでいた協会の内装と別に変わりはない。ただ花が増えただけだ。なのでここらの扉もたぶんいくつかには内部空間を広げる魔法的術がかかってるんだろう。
 
「姉上の場所はわかってるのですか?」
「この時間なら、多分講義を受けてるんじゃ……っとあれは」
 
 ちょっとだけ進むと、何やら廊下に女の子たちが見えた。皆さん白いロープに更に男たちは身に着けてなかった頭から腰辺りまで伸びるベールを身に着けている。そして誰もが祈っていた。
 
「何やら様子がおかしいな」
「多分兄上たちの所で起こった魔法的な暴走で非難をしようとしてるのではないでしょうか?」
「なるほど……確かにそれはあり得るかもしれない。魔法の暴走といえば、大惨事だしな」
 
 プライムとアヴァーチェはそんな会話をしてるし、それは俺にも異論はない。それなりにアヴァーチェがいた教室の前には人だかりできてたし、この協会内に伝わってるとみていい。
 そしてここはあそこからそんなに離れてる訳じゃない。なら念の為に避難をしようとするのはごく当然のことだ。
 
(避難先で接触はリスクが高いか……)
 
 きっと非難するだけにここよりも強固な守りがあるようなところだろう。そうなると、そこから連れ出すのも一苦労かもしれない。何とかしてここで接触してうまく連れ出せれば……それか――
 
(最後の一人だし、こうなったら無理矢理って手も……)
 
 いややっぱりそれはまずいか。ここまで時間がかかってちょっと面倒に感じてしまってる自分がいるが……急く心は判断を鈍らせるものだ。ここで下手に動いたら、慎重にやってきた意味がなくなる。そうなると、王様達の動きを察知されかねない。
 そうなったらここ中央からの脱出が困難になる。それは困る。なるべく平和に秘密裏に……が必要なんだ。俺は焦る気持ちを押さえつけて、二人が目当ての人物を見つけるのを待つ。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 316

「アヴァーチェです。よろしくお願いいたします」
 
 そういいつつ、なんかアヴァーチェの奴は俺とプライムの間に体を入れ込んで立ちふさがるように立ってる。まあその警戒感は悪くない。なにせ彼は王族だ。命を狙われる理由も使われる理由も腐る程あるからな。
 そんな簡単に他人は信用してはいけない。てかそれで考えるとこれだけ頭がよくて大人びてるプライムが俺の事を簡単に信じたな……と思った。
 
「大丈夫ですよ兄上。そこまで警戒しなくても……」
「だが……この方が本当に父上たちの使いかどうか……」
「協会が私たちの待遇を変えたならこんな事はしませんし、私たちを狙う者なら、こんな回りくどい事はしないでしょう。気づかれずにこの協会の総本山である大聖堂に入れているんですからね」
「確かに……これだけ腕が立つのなら私たちを殺す事は簡単な事か……」
「ええ、それよりも姉上の所に急ぎましょう」
「そうだな、こっちだ!」
 
 アヴァーチェの案内でしばらく歩くと花があしらわれた大きな柱が左右に立ってる場所があった。光たちは何とはなしにとおったみたいだが……どうやらここから先が女子達が集められてる場所らしい。
 
「ここは勝手に入ったらいけない場所なのですか?」
「ああ、私達男性は勝手に入ることは禁止されてる」
 
 そういう会話をアヴァーチェとプライムがしてる間に俺は柱に近づいてよくみる。確かに薄い魔法の線が柱の間に通ってる。これが遮断されると警報的な知らせが伝わるか鳴るんだろう。それが女性か男性かも判断してるみたいだ。
 
 単純だけどちょっと複雑みたいな仕掛けだな。とりあえず俺は柱に触れずにノアを使ってその解析を任せた。ノアはこの世界の魔法に精通してるからこの程度の魔法的な仕掛けなら見破れるはずだ。
 
「大丈夫です。このまま通りましょう」
「いやだから――」
「大丈夫ですよ兄上。勇者殿が言うのなら信じていいです」
「――そうなのか?」
 
 俺はまだアヴァーチェには信じられてないからな……不安に思うのは仕方ない。だからまずは俺が通ることにした。別になにも起きずに俺は二本の柱の間を通った。
 
「この通りです。さあお二人も早く」
「行きましょう」
 
 プライムに引かれてアヴァーチェも柱を通った。そして通った後も柱を振り返りこういった。
 
「何もなかったのか? 脅しだったのだろうか?」
「いえ、魔法的な仕掛けがありましたよ。でもあの程度ならどうにでもなります」
「……協会の魔法に精通してるんですね……貴方はいったい……」
 
 ちょっと感心されたが、 逆に警戒心も高まった気がする。まあおかしいからな。だが異世界から来たってのも今はじっくり説明できないし、とりあえずあと一人を確保するのを優先して俺たちは進む。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 315

「本当に協会は正しくないのだろうか?」
 
 アヴァーチェにとっては妹、プライムにとっては姉である最後の子供の所に向かう途中でぼそっとアヴァーチェがそういった。目の当たりにしたはずだが、これまでの教育の成果か、まだ協会を信じたいようだ。
 
(いや、いきなり全部ひっくり返すなんて無理だよな)
 
 寧ろそんな簡単に心変わりるする方が怖いっていうか……そもそもが俺たちがアヴァーチェに打ち込んだのはちょっとの疑惑だ。完全完璧に正しいと教えられてたアヴァーチェに「本当にそうだろうか?」と思わせるきっかけを与えただけ。
 
 だから協会を信じたい気持ちがあるのは仕方ない。
 
「正しくない……ことはないと思いますよ兄上」
 
 そうプライムが言った。それにちょっと驚くアヴァーチェ。なにせさっきまでプライムは協会を否定してた側だからな……そんなプライムからそんな言葉が聞けるなんて思ってなかったんだろう。
 
「お前……どっちなんだ? 協会を否定したいんじゃないの?」
「兄上、勘違いしないでください。私は協会の全てを否定してるわけではないですよ。実際、今日まで協会は民衆の心の支えであった事は事実ですしね。
 でもどんな物にもいい面と悪い面があるという事です。そしていい面だけを取り繕ってみようとしないのは、自分自身の目を曇らせることになるということです。誰かに言われたから……ではなく私は、自分で考えて自分で決めたいと思ってます」
 
 お前はいったい何歳だ? と言いたい。プライムの奴が立派すぎて怖い。いや今までも何回も思ったけどさ……どう考えても三歳児の思考してないぞ。
 だって何か劇的な事があったわけでもないよな? だって生まれてすぐに協会に連れてかれてる筈だし……何か協会にされたのか? はっきり言って、それしか考えられないが……元からこうだとしたら、前世の記憶でもあるのか? と思うくらいだ。
 
「確かに……自分で決めて……その責任は自分で追わないといけないな。それが王族というものだ」
「いいえ兄上。それは一人一人そうでなければいけないと思いませんか?」
「はは、確かに」
 
 なんか兄弟がいい感じになってる。どこらへんで出ていこうかと思ったが、この雰囲気ならいけるだろう。まあ実はずっと後ろをついていってたんだけど……二人は運よく協会の人たちに見つかってないと思ってそうだが、実は俺が不可視の魔法を使ってるからだ。
 ここらでちゃんと合流しとかないと、もう一人の子の所で合流することになってしまう。
 
 ちょっと先回りして――
 
「よう、上手くいったようだな」
 
 ――壁に背を預けて余裕綽々の態度で二人を待ってた演出と共に、俺は現れた。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 314

「行くぞプライム!! 走れ!」
 
 そういってアヴァーチェがプライムの手を引いて砂の中へと消えていく。俺はそれを見て「ふう」と息を吐いて変身魔法を解いた。ちゃんとこの流れに持っていけるのか……実際ひやひやしたよ。
 やっぱり無理矢理連れて行くのと、自分で納得していくのは違うからな。けどおかげでかなり時間を食った。この建物に浮遊させてる光から入ってくる情報的に、本物の神父がこの教室の惨状に度肝も抜かしてる。一応入れないように妨害してるが、このままではアヴァーチェ達も教室の外に出れない。
 
「プライム、そのまままっすぐに進むんだ」
 
 俺は砂に隠れて二人に忍び寄ってプライムだけにそういった。このまま扉にいかれてそこで鉢合わせ……なんてことをさせる気はない。どうせ砂嵐で視界はないんだから、いつの間にかこの部屋から出てたってことにしておこう。
 
「くっ、この力の暴走みたいなのもお前がやってるのか?」
「これは父上と母上がよこしてくださった方の力です。おかげで追ってを撒けるでしょう」
「そうだが……私たちもどこに行けばいいか……」
「兄上、このまままっすぐです。それで大丈夫」
 
 兄弟は二人でこっちにきてる。俺は聖剣を取り出して、音もなく壁を切り裂いた。ちゃんと隣は人がいないのは確認済みだ。どうやら皆さん、この教室の異常を聞いて廊下に集まってるらしい。魔法的な部屋ならはっきり言って厄介だったが、そうでなかったからある意味ラッキーだったろう。
 
 魔法で空間拡張してるような部屋を子供たちのメインの教室の隣にしてるのは事故があったときとかに危ないのかもしれない。ここにいる子供たちは洗脳して協会の為に将来的に役立ってもらわないといけないんだろうし、下手に潰したら教会側だってしたくないんだろう。
 
「ここは隣の教室か?」
「そのようですね」
「廊下が騒がしいな」
「きっとさっきの部屋で起こってる事で騒いでるんでしょう。この混乱に紛れましょう」
「おい、その父上と母上がよこした奴はいいのか?」
「大丈夫です。きっとすぐにこられます。兄上は姉上の場所への案内を頼みます」
「そうだな、アイツも説得しなければな……」
 
 そういってアヴァーチェは沈痛な表情をしてる。やっぱりまだ協会の事を信じたい気持ちはあるんだろう。実際神父一人を怖く感じた程度じゃな。でも確実にアヴァーチェの中には協会への疑惑が根付いただろう。
今はそれだけでいい。
 ただ信じるだけでは思考を放棄してるのと変わらないからだ。二人はこそこそとあと一人の元へと向かう為に動き出した。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 313

「協会はどうあっても魔法を血浄以上の物を提供する気はないのですか? 協会が血浄以上の物を提供できると民がしれば、それを求めるはずです」
「それは混乱につながるのですよ」
 
 協会側の意見として、俺は勝手にこれ以上はない……という態度をとる。いやだって、事実血浄以上の魔法的な何かを協会はずっとおろしてないし……追い詰められてる筈なのに、それをしないってことは、これ以上自分たちの切り札である魔法を外に出す気はないっていう表れだと思う。
 だから俺は適当に喋ってるが、あながちまちがってはないと思ってる。
 
「ですが、このままでは協会は民を救うことができません。事実、街は砂獣によって落とされてる。協会はどうするつもりなんですか?」
「それはですね……子供が考えることではありません。色々と考えていますから、大丈夫ですよ。中央だけではなく、全てが救われる術を考えています。それはとても難しいですが、私達協会は諦めてなどいません」
 
 俺は言い訳らしい事をがんばっていう。子供に言う事ではない――うん、汚い大人がいいそうでよかったと思ってる。実際、子供に話すようなことじゃない――ってことで誤魔化すことは多いだろうしな。世の中の大人はよく使ってるだろう。
 それにプライムは三歳である。普通こんな話しないから。
 
「皆さんに魔法を広めたほうが簡単だと思いますが? 協会だけでは手が足りないのは明白です。血浄という力のおかげで、これまで町はそれぞれ自主防衛が出来てたのです。それが及ばなくなってきてるのなら、次のカードを切るべきではないですか? 
 手遅れになる前に……このままではその内中央だけが孤立してしまいます」
「中央以外の全ての街が落ちると言いたのかプライム!!」
 
 アヴァーチェが慄きながらそういってる。信じたくはないんだろう。まあ実際はジャルバジャルとアズバインバカラが沈むことはない。なぜなら、魔王とジゼロワン殿がいるからだ。でもそれを言う奴はここにはいない。だからアヴァーチェには確信めいたようなプライムのその言葉を恐れる。
 
「落ちますよ兄上。このままでは遠くない未来にそうなります。そうなってからは手遅れなのです! 協会は全ての人を救うのでしょう? なら今すぐに行動に移さないといけない。協会はどうするんですか?」
 
 ここらへんだろう……もう十分この神父は追い詰められた。今の俺にここから反撃する手はない。そして口が出ないのなら……手を出すのが最低な奴の習性である。
 
「ふっふっふ……どうやら君の弟は危険な思想に染まってるみたいだ。教育が必要なようです。すこし厳しい教育が……」
 
 俺のその言葉に何かを感じたのか、アヴァーチェが「やめてください、アイツは私の――」といって服をつかもうとしてくる。それを払いのけて俺は叫んだ。
 
「貴方も教育を受けたいのですか!! 君の弟は危険な……そう危険分子なんですよ!!」
 
 そういって俺はプライムに近づいていく。おびえたように後ずさりするプライム。
 
「さあ、お仕置きの時間です」
 
 そういって手をのばして、あと少しでつかめる……と思ったとき――「ごめなさい!!」――という言葉と共に、アヴァーチェの奴がプライムの手を引いて周囲を舞ってる砂の中に飛び込んできえていった。
 
「ふう、これでアヴァーチェも協会をでるだろう」
 
 狙い通りだな。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 312

「安全ですか。それはここだけではないですか。この中央だけが安全で、そんなことに意味なんてあるのでしょうか?」
 
 プライムの奴が大手を振るった神父(俺)を非難するようにそう言うよ。うむうむ正しい。それは実際に正しいぞ。協会の奴らは自分たちさえ良ければいい……その傲慢さをアヴァーチェのやつに知らしめないといけないからだ。
 
「中央が安全であればこそ、全ての人は安心できる! そうでしょう神父様!!」
「その通りですね。ここは柱なのです。世界の柱。その柱が揺らぐことがあってはなりません」
 
 むむむ、どうあってもアヴァーチェの奴は協会の擁護に回るな。そろそろ教会が自己中心的だと気づいてほしい。これが幼少期からの教育……いや洗脳の賜物か。根深いものがある。でも少しずつだけど、不安というか、疑問くらいはできてるはず……だよな? そうであってくれないと困る。なにせアヴァーチェの次には妹……いやプライムにとっての姉だって控えてる。流石に毎回、こんな小芝居やってられないぞ。
 
「協会はそうやってここだけを守るのですか? 先日落とされた町も協会が兵を向ければ助けられたのではないですか?」
「送りましたよ。ただ間に合わなかっただけです」
「ジャルバジャルは一度落とされても取り返した奇跡の街と言われてます。それを協会はできないのですか? アズバインバカラの人達はそれをやってのけたそうですが?」
 
 うむうむ、ここで他にはできたのに協会にはできないって印象を与えるのは大事かもしれない。なにせ協会は威張り散らしてる。それは力と信仰があってこそだ。でもここで協会ができないと言ったことを別のどこかがやってたとなったら……それは協会の無能さの証明だ。
 
「アズバインバカラは運が良かったのでしょうね」
「運ですか?」
 
 苦しい言い訳だろう。なにせそういう風に感じれるように俺が言ってるからだ。
 
「ええ、とてもアズバインバカラは運が良かった。ただそれだけです。砂獣に落とされた街を取り返すというのはそんなに簡単なことではないのですよ。だから運が良かったとしか言えないのです」
「協会にはできないと?」
 
 さて……プライムのこの質問になんて答えればいいのか。流石に「出来ない」は意地汚い協会側の主張としては正しくない気がする。もっとこいつらは狡猾だ。なら−−
 
「出来る出来ないで言えば出来るでしょう。そう運が良ければ」
「また運ですか。運に頼らないといけないほどの戦力で、この中央が大丈夫とよく確信できますね。それに、他の街も救えないようなら、それぞれの街に自主防衛のためにも魔法という手段を広めるべきではないですか? それとも……協会は自分たちがいるこの中央さえ守り通せれば、それでいいでしょうか?」
「プライム!! お前はなんてことを!!」
 
 流石にこれにはアヴァーチェも激昂してる。でもここで下手に激昂されても……ね。邪魔なだけだ。なにせここらで少しずつ不機嫌になって言った方がいいと思ったからだ。自分が不機嫌な演出をして「神父様がこんなに怒るなんて−−」とかアヴァーチェには思ってもらおう。
 
「ふふふふふ、本当に賢い子ですね君の弟は。そう……賢すぎて大変嬉しいですよ」
「神父……様?」
 
 俺の迫真の演技にアヴァーチェはちょっと引いてる。言葉はまだ体裁を保つべく丁寧さを保ってるが、震える声や抑揚でその怒りを現してみた。うむ……俺はなかなかの演技派かもしれないな。そう思った。