uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

ある日、超能力が目覚めた件 440P

『なあ、どうしたらいいと思う?』
 
 野々野足軽はベッドの傍らにいる透明な存在にそう問いかける。声に出してるわけじゃなく、二人の会話は頭の中だけで完結できるから、もしも野々野小頭が再び戻って覗いてきたとしても、ただ寝てるように見えるだろう。野々野足軽の場合はミスって聞かれたくない会話を聞かれる――なんて事はないのだ。アースとの会話は特にそうだ。なにせ二人以外は受け取ることができない。声なら知らず知らずに振動が伝わって誰かの耳に届いてる……という事がありえるが、野々野足軽とアースの間にはそれはない。
 なにせ二人は対象にめがけて思考をぶつけてるからだ。今も思念も飛ばして二人は会話してる。それに色々と力を使って状況の把握に努めてるわけで、野々野足軽は別にサボってるわけじゃない。むしろ誰よりも働いてる。家で寝てるだけ……のように見えて世話しなく実はうごいてるんだ。
 
『それはこの事態をどういう風に収集したらいいのか……という事ですか?』
『それもある。だって、これって……事態を収めたとして……何が原因とかになる? あの悪魔に取り憑かれてる女性を警察に差し出して終わりには……ならないだろ?』
『そうですね。力を裁く法はこの時代のどの国にも存在してませんからね。それに……もしもこれで裁いたら認めたようなものです』
『そうなんだよな。それかなんとか記憶を改竄するとか考えたけど……いや無理だろ? だってもうネットで世界中の人がこの事態を把握してる。一体どれだけの人の記憶を弄ることになるんだよってことだ。いくら俺でも不可能だ。でもお前なら……』
『不可能ですよ。その後の日常生活を何も考えずにやっていいのであれば、全ての人類から一斉にこの期間の記憶を消す……というなら出来ます』
『なるほど……』
 
 実際既に世界中の人が知ってしまって、そしてそれをより分けるにはもう大多数が過ぎるのだ。でもアースがいうように今の人類をより分けることなく、全体……つまりは70億? 80億? くらいの記憶を消すだけなら野々野足軽は自分でも……と思った。
 
『いや、俺じゃ無理だな』
 
 出来るか? と考えたが、流石に億は無理だと思った。それに……だ。それにアースも言ってるようにその70・80億の人類の日常生活の影響を考えないで――と言ってるのは、そんなピンポイントでこの期間の記憶だけを消せるかもわからないのだ。もしかしたら誰かは一年の記憶が消えるかもしれないし、もしかしたらは3年分の記憶が消えたりもするかもしれない。そういう期間じゃなく、自身が何者かわからなくなるかもしれない。
 つまりはそういうリスクを諸々と無視してなら、全人類からこの事件を消すことはできる……ということだろう。つまりはダメだ。それを許可する勇気は野々野足軽にはない。だってそんなのするの……
 
『悪でしかない』
 
 ……誰かの記憶を勝手に奪う。それによって世界がどうなるか……とんでもないことになるだろう。けどそうじゃなかったら、この事件がたくさんの人に記憶される。力が怖い……恐ろしいものだと印象付けられるかもしれない。
 
『どういう風に転ぶかは終わらない限りわからないものですよ』
 
 そんなアースの言葉。それを受けて、色々と考える野々野足軽。その視界にはこの事態をどうにかしようと頑張ってる人たちが映る。それはイメージではない。ちゃんと今まさにのリアルタイムの映像だ。遠視によってそんな人たちの頑張りをみて野々野足軽は決意した。
 
『そうだな。まずは悪魔を止める。後のことはそれから考える!』
 
 そういう風に決意したみたいだ。