(お前……何を言い出すんだ?)
これがきっと小悪魔って言われてたら、野々野足軽は女性の悪魔……そこまで恐ろしくない、むしろいたずらっ子的なかわいい悪魔を思い浮かべてただろう。けど悪魔と言われたから、まがまがしい感じになってしまってる。実際、本当に今見えてる悪魔の姿は、野々野足軽の心情風景が入ってると思う。
とても恐ろしい、悪魔の姿。そこまではっきり見えるわけじゃない。黒い影に角と翼がある感じ。でもそんなんだからこそ、人の脳は勝手に補完するというか……
(こいつは危険だ)
そういう風に野々野足軽は感じてる。こんな簡単に人を操る……もしもこれが無制限にこんなことが出来るのなら、人類なんてとっくに滅んでておかしくない。信じる心……そんなのを悪魔はあざ笑うかのように塗りつぶしてる。まさに悪魔と言われてしっくりとくるというか……納得感しかなかった。だからこそ……危険だと野々野足軽は訴えてる。
『大丈夫ですよ。あなたにとってはただの雑魚です。今だって、悪魔の抵抗をかんじてますか?』
(それは……)
アースの言葉に野々野足軽は自身の力を感じる。確かにさっきから悪魔は野々野足軽の力から抜け出さそうと色々とやってる。けどそれは叶ってない。それってつまりは野々野足軽の力の方が悪魔の力よりも強い……という事だろう。
そういわれたら、どうにでも出来ると思えてちょっと心に余裕が出てくる。
(けどこいつが危険なのは変わりないだろ? そもそも、ここで消さずにどうするんだ?)
そこである。アースはこの悪魔を消し去ることを止めた。でもこいつはそのままにしておくなんてできない。そうなると一体どうするというのか野々野足軽は疑問だった。
『そんなの簡単です』
(簡単?)
『あなたの中に入れておけば万事解決じゃないですか』
「どこがだよ!?」
けど幸いにも仮面の男達には気づかれることはなかったみたいだ。それは運が良かったと言えるだろう。彼らは自分たちの世界に入ってる。
特に仮面の男は両手に可愛い女性を侍らせててめっちゃいちゃんちゃとしてる。こんな公衆の面前でよくやれる――と野々野足軽は思うほどだ。
そしてそんな仮面の男を見てるとちょっとイラッとしてくる野々野足軽。さっきのとんでもないアースの言葉も、今のあの仮面の男をギャフンと言わせられるのなら……と考えるとちょっと考える事ができる。
(今、悪魔を俺の中に捕らえれば女性たちは正気に戻る事になるよな。そうなったらあいつはただのセクハラ野郎になる?)
『そうですね』
(ちなみに聞くけど、俺に悪魔の影響は?)
『あると思いますか?』
そんなことなんで聞くの? って感じで言ってくるアース。そこに嘘やら虚言は感じない。なにせそんなのする必要がないからだ。なにも影響が出ないのなら、それもアリかもしれないと思い直す野野々野足軽。なにせ悪魔という存在はかなり希少らしいし。確かにこのまま消すのはもったいないかも知れない。
(どうやって悪魔をこっちに移動させればいいんだ?)
『力で悪魔を包みん込んで自身の中に移動するようなイメージをすればいいでしょう。彼らには実態はありません。認識の問題です。そしてそれを行えるのは強いほう。
彼らには強制力が働きます』
はっきり言ってあんまりアースの言うことはわかんなかった野々野足軽だ。けど、やってみることにした。だってつまりは力で包んで『移動しろ』と思うだけである。
ならまずは考える前にやってみる。それに『力』はだいたい野々野足軽に答えてくれるのだ