「きゃあああああああああああああああああああああ!!」
大地の切れ目に落ちていく私たち。一体いつまで落ち続ける気なのか……一向に終わりが見えない。まさかここは深淵なのか? 深淵って何? あれって概念的な物じゃなかったのか。てか普通なら終わりがあるだろうに、本当に終わりがないからまさにここは深淵というのが正しいと思う。
世界とは漠然的に一つの星をイメージしてた。けど……もしかしたら違う? 普通ならこんな裂け目に落ち続けたらマントルとかに着くんじゃない? だって星の中心ってそれでしょう? まあ中心を上手く避けて反対側にでるって事も無きにしも非ずかもしれないけど……
「どうにか出来ないの?」
『今の装備ではどうにも……ブースターも今は冷却が必要です』
むむむ、やりようがない。一緒に落ちてた筈の水はとうに霧になってしまって消えてる。これってこんな所に水が落ちてたら、世界は水不足にならないのだろうか? 深淵の深いところで霧なって立ちこめてたし、蒸発して雲になるって事もなさそうなんだけど……わからない。この世界はもしかしたら私が覚えてる常識とは全く違う形態をしてるのかもしれない。
『底があります』
「え? 深淵の底? 何地獄?」
『それはわかりませんね』
深淵の底には一体何が? ろくな物の筈じゃ無いと思っといた方が良いよね。まあマグマとかじゃないなら、なとか生きることは出来るだろう。魔王と勇者がどうなるかは知らないが……とりあえず二人を守るために左右の手で包んどく事にした。
私は態勢を整えて、両肩にあるライトを下に向ける。ほぼ、数メートル先しか照らせないが、大丈夫。G-01はいろいろな機能がある。今までは深淵をスキャンしても何もなかったが、今なら確かに底があるのが見て取れた。私は上手く全身を使って衝撃を足から膝に吸収させて更に上に逃した。
この体じゃなかったら確実に潰れてただろう。これの体だから、ちょっとジーンとする位ですんだ。
「ここが深淵の底……」
地面には何やら靄がかかってた。けど感触的に土ではない。もっと硬質な何かだ。上を見ると、大地が見えた。そして恐ろしい事にこんな深淵まで地上の木々の根が張っている。まあ空にまで昇ってたしね。ここまで根を張らないと踏ん張れないってのはわかる気がする。
「何だ? 一体どうなってる!?」
「落ち着け魔王! これは多分――」
答えを勇者に言われる前に二人を解放した。全く手の中で暴れないでほしい。チクチクしたよ。魔王は魔王だけに暴れるの本当に好きだね。
「ここは一体?」
「一体何があった?」
二人とも何やら私を責めるように見てる。止めてほしい、あれは事故なんだよ? あんな所にこんな深い穴があるなんて誰も考えてなかったじゃん。それなのに私だけ責められるとかなっとくできない。確かに、確かにちょっと調子に乗ってた事は認めようじゃないか。けど、そのくらい誰にだってあることだろう。まあとりあえず現状だけは教えといてやろう。
「なんか落ちたら、深淵の底についた」
「はあ!?」
「うーん、それだけじゃあ、ちょっとわからないというか……」
けどこれ以上どう説明しろと? だって私だってわかってないんだよ? 無理じゃん。まあそもそもここが深淵という場所の底なのかしらないけど。なんとなくでそう呼んでるだけだ。
「ふん、とりあえず新たな場所に来れたんだ。あたりを探るぞ」
魔王の奴はわくわくでもしてるのか、案外さっきの失態は気にしてないようだ。よかった。そんな魔王に勇者は安心したのは、ほっと胸をなで下ろしてる。苦労人だね勇者。二人とも力が戻ってるし、私と共に進んでも問題ないくらいには強いみたい。
まあ諸々含めたら私には及ばないが、どうやら一緒に併走するくらいなら、出来るみたい。勿論私は全力なんて出してないが、肩に乗れば楽なのに、そんなにグロッキーだったのか……なんか拒否られた。
「何もないな……」
「そうだね」
「ここは分かれるか」
「でもそれは危険じゃないか?」
魔王と勇者が二人でそんなことを言ってるが確かに危険ではないだろうか? 確かに何もないけど、それは今の時点では……だ。ここはどうやらだだっぴろい。何がいたっおかしくない。それこそあの空獣みたいな化け物がいたって……何せ深淵だからね。深淵からのぞき込んでる奴がなんなのか……ここでならもしかしたら確かめられるかも……
「ふんびびってるのか?」
「そうじゃない。どうしてそうなる?」
「なら問題ない。俺たちも回復してる。そいつが異常なだけで我らは弱くなんてない。問題なんて無いだろう」
「それは……そうだが。ジゼロワン殿はどう思う?」
ふむ……私的にはどうでも……危険と思うが、よく考えたら二人は世界最強だった奴らだ。そうそう危ない事なんかあるとは思えない。私的には二人とも弱っちいが、魔王の言うとおり二人は弱くなんかない。なら別々で行動しても問題ないのかもしれない。
「別にいいでしょう」
なんか勇者相手だと無駄に尊大になってしまう。とりあえず私たちは深淵を別れて探索する事にした。