「すみません。彼は気性が荒いんです。まずはお互い自己紹介をしませんか?」
そう言って爽やかイケメン顔を輝かせて勇者の奴が自己紹介をしてる。そしてそれを魔王にも促してた。ちょっと抵抗してたが、仕方なさそうに魔王もそれをやる。え? 私? 私がやるわけ無いじゃん。私はただ大人しくジッとしてるのみだ。案外それでも楽しい。今は視界をどこまで伸ばせるか色々とやってる。するとこの街の一番大きな建物に目がいった。そのベランダ部分には一人の男性がいた。結構壮観な顔をしてるイケメンなおじさんだ。整えた髭も渋い。その人がそこからこっちを厳しい顔をして見てる。
(偉い人?)
でもそこまで豪華な服装をしてるかというとそうでもない。偉い奴はなんとなくで豪華な格好をしてるものだと思ってる私だ。でも雰囲気はある。偉そうな……というか、なんかオーラというかね。そんなのを感じる気はする。
「あれってサンクチュアリを持ってるんじゃない?」
「スキャンした感じ、そうではないようですが」
「そっか……なんか感じるんだけどね」
「なら何かあるかもしれませんね」
慰めか? それとも本当に私は何かを感じる力があるんだろうか? そんな話しをしてる間に、勇者と魔王の方はなんか取り囲まれてた。
「そちらの言い分はわかった。だが、貴様等が天の使いか、それとも悪魔の使者かまでは判断できん。そこの老人も騙されてるやもしれんしな」
「どうしたら証明できるんですか?」
「腹をかっさばいて中身を見せてもらおうか?」
「そんな事が出来る訳……」
いや、実際出来る。今の魔王と勇者ならね。腹をかっさばいた所で致命傷にはならないし。でもここで「はいやります」そして「ほら、出来たでしょ?」なんかやったら、逆に悪魔認定される事だろう。なにせ二人は普通の……いや、魔王はかなりここでは珍しい見た目してるが、勇者は普通の人にしか見えないだろうそんな自分たちと同じだと思ってる奴がいきなり腹をかっさばいて全然ピンピンしてたら周囲はどう思うか……異常だと誰もが思うだろう。それこそ悪魔だって思われる。
つまり出来なくて……この三日月髭のおっさんは出来ない事を要求してる。どっちに転んでも悪魔と言うことにしたいらしい。
「もう、こいつら潰した方だ早くないか? 殺しはしない、それでいいだろう」
「だが、そうなったら色々と情報収集が大変だ。なるべく穏便にしておきたい」
二人はそんな事を話してる。
「ふはははは!! できんと言うのなら、大人しくとらわれて貰おうか? 抵抗してみろ、我が三日月剣がきらめくぞ」
そう脅してる三日月髭のおっさんだが、正直それを二人が恐怖することはないと思う。いや、この世界の奴らの実力はまだわからないけどね。とりあえず勇者と魔王は大人しくしてるみたいだ。まあ偉い奴らの前に連れてってくれるのなら、ここで暴れる必要は無いって判断だろう。それで、私はいつまでここでこうしてればいいのかな?