「余計な事を」
我はゴミがわらわらと動きだしたのを見てそう呟いた。奴らでは相手にならない……その筈だが、どうやら勇者の奴が力を貸してるようだ。アホな奴だ。せっかくこう言う相手とやり合うことこそ、力を馴染ませることに一役買うというに。こいつらには何の遠慮も必要ない。
「ふん」
まあ良い。勇者との差をつけるだけだ。それにゴミが邪魔をしなければそれで良い。奴らもわざわざ我に巻き込まれるようなことはすまい。何やら砂から尻がでかいやつが出てきた。そしてそいつらが糸を吐いてくる。どうやら我が飛んでるから捕まえて下に落とす気のようだ。
「上等だ」
我は避けるような事しない。その糸を甘んじて受けた。うん……ベトベトして気持ち悪い。だがなかなかの粘着力だ。これなら大抵の存在は捕まえることが出来るだろう。まあ我は無理だがな。この程度の糸なら簡単に引きちぎれる。だがあえてしないさ。獲物を誘うのだ。砂獣共は我が詰まったと思ってわらわらと向かってくる。所詮は獣か……自分たちとの圧倒的力の差を見せつけてやったにもかかわらず、少し状況が好転したと思ったら、何も考えずに向かってくる。本当の強者なら、小細工など入りはしない。だが……奴らはそうじゃない。忠夫翁からだと頑丈な肉体があるだけの化け物だ。
この世界の奴らはそれでも十分に蹴散らせるだろう。だが我は違うのだよ我は!!
「その存在自体に刻め――魔王という名を!!」
我は向かって来た砂獣共をただの一撃の下に葬り去る。黒い波動が前面百八十度に放射され、その直線上にいた砂獣はもれなく塵一つ無くなった。前に倒した砂獣よりは堅くなってるが、我に対し手だと全然足りない。それが結論だな。我は後ろの方を見る。別方向から向かって来てた砂獣にこの世界の奴らが対抗してる。その戦いはなかなかに危なっかしい。我が思ってるよりももしかして砂獣は強くなってた? この前アズバインバカラに出てきた砂獣との戦いの時はまだ戦えてた気がする。
いや今も戦えてないわけじゃない。複数人でなんとか一体の砂獣を相手に出来る程度には戦えてる。だが、それもギリギリだ。勇者のサポートがなければ、一瞬で勝負は決まってたんじゃないだろうか? そのくらいに見える。
「まあだが、奴がいればいいだろう」
お守りはお人好しな勇者に任せ置けば良い。俺は都市核を回収しよう。俺はジャルバジャルの中心に向かって歩き出す。するとその時、砂から何かが出てきて、俺に襲いかかる。四本の管みたいな物だ。尖端はドリルのようになってる。俺はとりあえずジャンプして回避した。だがおってくる。とりあえず向かってくるなら打ち落とす。パンチ一回で逆に破壊してやる。これで残り三つ。すると次はぶつかる寸前でドリルを開きやがった。そしてエネルギーを溜めた光線を放ってくる。だが――
「こんな物か?」
俺はそれを握りつぶして、二つ目の管も破壊する。この程度で魔王の歩みを止めようとは片腹痛い。我はただここの都市核……サンクチュアリかも知れない物を求めて歩く。