このアズバインバカラの人達が協力してくれる。それは狙い通りだった。でも流石にこのまま荷台で宮殿がある方に行くのは目立つという事で、ポニ子達は荷台から降りた。あの変な格好の奴ら、なんか更に四十人くらいに増えてるんだよね。
そしてそいつらはどうやら宮殿周辺を囲んでる。二十人は子供達を追いつめる為に動いてるが、他の奴らは宮殿周辺にいるんだ。どう考えても、宮殿の方に助けを求められないようにしてる。でも……
「流石におかしくない? それともこの世界の人達は突如現れる事が出来るとか?」
『それは興味深いですね』
「興味深すぎるでしょ」
そもそもそんな能力が誰にでもあるのなら、何日も掛けて他の場所に行く……なんて事をしなくていい。でも実際、魔王も勇者もジャルバジャルに何日もかけて行ってるのだ。二人だけなら、一日も掛けずにいけるけどね。それでも一瞬って訳じゃない。
でも奴らは一瞬で現れた。
「これってどうやって識別してるわけ?」
『生体反応ですね。力の波長は大元は世界で違いはありませんが、その波長の大きさは違います。波も個人差がありますからね』
「ふーん、でもそれだけじゃ、この増えた奴らがその集団かって事、わからなく無い?」
力の波動が個人で違うのは理解できる。色んな物に個人差ってあるし、人はどの世界でも千差万別だ。でもだからこそ、そんな中の中の事では互いの繋がりなんてわからないじゃん。それこそ奴らは見た目が特徴的だ。それを見てたらまあわかる。けど、今回はポニ子の目を伸ばしてない。それなのに、正確に人数を把握してるのはどういう事?
『わかりますよ。何せその増えた奴らは人間では有りません。それに波長がとても似通ってる。まるで分身でもしてるかのようですね」
「どういう――」
『ヤバい!』
AIにどういう事か聞こうと思ったら、ポニ子の聴覚を通じて子供達の焦った声が聞こえてきた。ポニ子の視覚を投影してるモニターを確認すると、確かにあの変な格好をしてた奴らが三人建物の側にいる。てか……
「なんか一人大きくない?」
『推定身長は2メートル50センチです』
「でか!?」
明らかに大きいよ! 絶対ヤバいでしょあれ。もう横にも縦にもデカくて、柱みたいになってるんだけど!? そうおもってると、なんか目が合った気がした。いや、向こうは変な傘つけてそれから布を垂らしてるから、全然目なんて見えないんだけどね。でも……なんか……
「匂う……匂うぞ……くさい匂いだ」
そんな事を言ってデカい奴がドスドスと地面をならしてくる。
「ポニ子!」
私はとりあえずポニ子に言って、二人の子供をその身に包んで貰う。これで匂いとかしないでしょう――とか思ってたら、デカい奴は真っ直ぐにこっちに向かってきて、かくまってくれてた女性のスカートをためらいなく剥ぎ取った。
「きゃああああああああああああああ!!」
そんな女性の羞恥の叫びがとどろくが、そんなの奴は気にしないでいってくる。
「見つけた……くせー別の力の匂い」
その言葉で気付いた。どうやらこいつは元から私達の匂いを追ってたようだ。でもクサイはいただけない。
「やれポニ子!!」
私の言葉に従ってポニ子がデカいそいつを吹き飛ばした。