さて、後顧の憂いを断ち切った私は帰ろうとしたところである事に思い至った。
「そういえば都市核は?」
よく考えたらアレがなかったのおかしくない? 多分だけど、あの変な砂獣が取り込んでたと思うんだけど……
「まさか、都市核事、やっちゃった?」
『そう言う事ではないでしょうか?』
AIが淡々とそんな風にいってくる。やめてほしいよね。そういう人を責めるようないいよう。まあ淡々と……淡々としてるけど、感情ないからこそ、なんかそんな風に感じるって言うかね……
「まあつまりは都市核一つ取り込んだ位じゃ、私には勝てないって事だね」
『都市核がなくなるなんて、問題なのでは? この世界の人達には?』
「でもそもそも、アインラザードが落ちた時点で都市核なんて無くなった様な物じゃない? 私が消し飛ばしても、責任なんてないよね? 寧ろアインラザードをぶっ潰した砂獣を人知れずに倒した私……英雄じゃね?」
ピキーンとなんか来た。英雄……良い響きだ。確かに都市核の力は惜しい。でもこの世界の人類は都市を落とされた時点でそれを半ばあきられてるんだから私責任なんてない。
『その砂獣を生み出したのは誰でしょう?』
「うっさい、そんなのは誰も考えつかないから。知られない事実は真実じゃないんだよ。けっけっけ」
『英雄と言うよりは詐欺師ですね。まあどうやって喧伝するんですか? 喋れない設定では?』
「くぅ~、そうだった」
自分の口からは言えないな。せっかく賞賛を受けられるのに……勇者から言って貰う? でもそうなると、なんでわざわざ? とか聞かれるかもしれない。いや、正義感の塊の様な勇者なら、『私も正義感に目覚めて』で通るか? 流石にそこまでバカじゃないんだよね。魔王なら『闘争本能が暴れ出して』とか言えば『わかる』っていってくれそうだけどね。
「しょうがない、砂獣の事は秘密にでもしておこうかな。そしたら都市核いっこ無くなったことも知られる事もないし。とりあえずあいつを始末できた事でよしとしよう」
本当の正義って奴は見返りなんて求めない物だしね。原因は私? 知らんなそんな事。
「さて……返ろう……うーん」
『どうしました?』
「いや、せっかく遠出してきたからね。ついでに、他の街とか、中央とかも確かめたくない?」