「本当なら、ローワイヤだけで良かったのですけどね。心変わりしました。あなた達には全員、『アムロス』の糧になってもらいましょう」
「アムロス?」
俺はその言葉が引っかかったから、チラッとローワイヤさんを見た。何か知ってるかも……と思ったからだ。でもローワイヤさんは首を横に振るう。どうやらしらないらしい。初めて出た単語だったからなにか重要そうな気がしたが、どうなんだろう。まあ今は確かめる事はできないだろう。ペニーニャイアンへとそれを聞きたい所だが、既に何かがおっぱじまってる。具体的には、俺達とペニーニャイアン達の距離が開いてる。部屋の中に居たのに何を言ってるのかと思うかもだが、事実だ。まるでこの部屋自体が伸びてるような……
「無限回廊でアビスにくわれなさい」
そんな声が最期に聞こえて、ペニーニャイアンとピローネ、そしてその場所自体が見えなくなった。そしていつの間にか俺たちは、暗い場所にいた。そこは本当に暗い場所だ。さっきまでのきらびやかな場所とは明らかに違う。
なんか足元もゴツゴツしてるし、ジメジメしてる気がする。
「なんだここ? おい、全員いるか!?」
どうやら俺以外の奴らには見えてないみたいだ。まあ明かりが一切ないから仕方ないな。
「我の視界を照らせ」
そんな言葉とともに、俺の手から小さな明かりが昇る。それは頭上の一メートル先に停滞して明かりを周囲へともたらしてくれる。
「おお、流石勇者の旦那だぜ」
皆、光で周囲を確認できて安心したようだ。まあ確実にペニーニャイアンがなにか仕掛けてきたってのはわかってたからな。暗闇の中から攻撃されたら厄介だから皆、緊張してたんだろう。まあ俺は見えてたが。
俺だけ見えても不便だからな。とりあえず明かりを確保したことで、皆に一定の安心感が生まれてる。それに下手に分断されなかったのも助かる。多分俺の介入というか、力を恐れてことだろうが……一度俺は黒い鏡を壊してるからな。これはあれとは違う感じだったが……
「なんだここ? 一体どこなんだよ。一体どうなってるんだ?」
「勇者様……」
皆が口々に不安を口にする。無理もない。なにせいきなり全く別の場所にいるんだからな。壁も床もゴツゴツしてて、洞窟のようだが、天上は見えない程にたかい。まあそこまでこの魔法では明かりを届けることはできないだけだが、でもかなり広い場所だ。
「無限回廊……とか言ってたな」
後ろも前も暗闇が続いてる。もしかして出口がない系の結界魔法か? これだけの規模は凄いが……それならやりようはある。それに俺の見立てでは多分転移系の魔法ではないと思うんだ。それなら……
「少し、離れてください」
俺はそう言って胸に手を置いて、そこから剣を出した。驚いてる人もいるが、今は説明してる暇はない。俺は聖剣を株に突き刺す。案外さっくりと入った。
(これなら!!)