「貴方達はかつて魔法を市中に広めた神父様を抹消した……その神父様の功績をすべて協会のものとして……ちがいますか?」
「嘆かわしいですな。それは違いますよ」
「ちがうんですか? 兄上の言葉では協会がそうしたと……」
「プライム!」
「そうなんですか?」
少しだけ威圧を込めて俺はアヴァーチェを見下ろした。まあ普通に見下ろしても負い目のおかげで、恐ろしくは見えたであろうけど、ちょっと追い詰めて協会が怖いという認識を自然に刷り込ませようと思った。
「ち、違います。抹消したとはいってません。ただ……そういう神父の話を見ただけで……」
「ふむふむ、そうですか」
ここで一転、俺は神父の姿でアヴァーチェの頭をポンポンする。それをどう思ったのかは知らないが……とりあえずプライムへと話をもどす。プライムならきっと、俺を追い詰めてくれるはずだ。
「拡大解釈がすぎますね。いや、子供はそのくらい想像力豊かな方がいいのかもしれませんが、嘘はいけませんよ」
「噓ですか?」
「ええ、私たちはそんな酷いことはしません」
「ならなぜにその神父様の名前はどこにもないのですか? 立派な事だったとあなたは言いました。なら、その神父様はたたえられるべきではないですか? 少なくとも、その存在を抹消されるべき存在ではないですよね?」
「それはですね。その神父が望んだからですよ。彼はとても敬虔な信徒でした。ですから、その功績を自分の物ではなく、協会の物とすることで、協会の影響力を強めたのです。おお! なんと素晴らしい信仰心でしょうか? わかりましたか?」
「素晴らしいです!」
またアヴァーチェの奴が感涙しそうである。作り話なんだけどね。いやさ、協会の都合のいいように想像したらそうなるかなって思って。
「仮にそれが本当だとして、せめて教会内部くらいにはその人の彫像とかあってもおかしくないとおもうのですが?」
「かの御仁はそういうのを望まれなかったのです」
すべての資料が無いのはその人が望まなかったから――死人に口なしで、協会はそういう事にしてるということにしておこう。
「ですが、その神父様は血浄だけを伝えたかったのでしょうか? 協会が独占してる魔法という力を広く広めたかったのでは? それを成せれば、この世界はきっともっと違ってたハズです。
なにせ魔法は強力な砂獣への抵抗力になりえます」
そういい終えて更に間を少しおいてプライムはいう。
「協会は魔法という力を誰しもが持つことを恐れたのではないですか?」
ううむ……このまま話してて大丈夫なのかちょっと不安になってきたが、プライムは諦めてないし、俺もプライムを信じて突き進むことにしよう。