「ふふ、姉は弟を信じるものですよ。それともあなたは弟を語る偽物なんですか? お姉ちゃんを騙す人ですか?」
「違います! 私は姉上を決して騙したりしません!」
「ならよしです」
二人がそんなやり取りをしてる中、俺はいままでプライムは騙してたよね? とか思った。なにせ今までは普通の三歳児くらいの演技してたんだろう? それって騙してるような……いや、でもやむにやまれぬ感じだったとは思う。プライムからしたらこんな大人びた子供だと知られたら、気持ち悪がられると思ったのかもしれない。
実際、ありそうだし。
「それでどうなんだカザムジャナ。私たちと一緒に来るのか?」
「ですがいきなり協会を出るといっても準備が必要です。シスターに確認をとらないといけないですし、せっかく父上と母上に会うのに、一般的なシスターの服では……どうしましょう? 何かいい服はあったでしょうか?」
アヴァーチェの言葉に、そういってカザムジャナちゃんは頬に手を当てて悩み始める。やっぱりだけどこの子……なんか結構自分のペースを崩さない子だな。それに事態の深刻さを理解してない。カザムジャナちゃんはちょっと行ってまた戻ってくる――程度だと思ってるみたいだけど、そういうんじゃない。
「それにその方は?」
「初めましてカザムジャナ様。私は貴女様方のご両親に頼まれてここまで来ました勇者と申します」
「ユウシャ様ですか、これはこれはご苦労様です」
王族の頭は高いところにありそうだが……カザムジャナちゃんは案外あっさりと俺に対しても頭を下げた。この子は王族だけどなんかプライムやアヴァーチェと違って上に立つ者……的な雰囲気があんまりない。
「カザムジャナ、父上と母上はどうやら協会と対立するみたいだ」
「そうなのですか? なら戻ってこれないと? 困りましたね……色々とある私物は一回では持っていけません」
この子は協会に一体どれだけの私物を持ってるんだ? まあけどよくよく考えたら、プライムはまだ三年間くらいだが、アヴァーチェもカザムジャナちゃんも十年くらいここにいる訳で、私物くらいはあるか。そんなの一切匂わせてないアヴァーチェがおかしいのかもしれない。
「私物はいったん諦めてください姉上。今は一刻も早く協会を離れることが大切です」
「これは絶対なのですか?」
やっぱりカザムジャナちゃん的には嫌なのかもしれない。ここで反対されたら面倒だな……と思いながらも、三人のやり取りも俺は見守る。
「絶対です。私たちの一人でも協会側に居たら、父上と母上の枷になってしまいます」
「そうですか……仕方ないですね。わかりました、ではプライム――『お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!』と言ってください」
「はい?」
なんかプライムが間抜けな声を出してた。いや、まあそういう反応も出るよな。なんだって?