「なんと! これは本当ですかポニ子殿!」
ポニ子の描きつらった文字を見てラパンさんがそんな風に声を荒げた。どうやら彼はポニ子の『ポニ』の部分は見逃してくれたようだ。そこが私的にはめっちゃ気になるんだけどね。絶対にキャラ付けしてきたでしょって……そういうことをポニ子が気にしてるんだって……ね。
まあ全然重要じゃないから、ラパンさんはスルーしたんだと思うけどね。そういうスルースキルラパンさんは高い。やっぱり偉いから毎日いろんな情報がもたらされてるだろうからね、それを瞬時に判断する能力があるんだろう。
どうでもよさそうなものにまで毎回突っ込んでたら、きっとラパンさんみたいな立場の人間では時間がいくつあっても足りないんだ。だからどうでもいい部分は突っ込まなくなってるのかも。
「ポニポニ!」
「本当だって言ってると思います」
「そうだね。ポニ子殿、それは勇者様からの連絡があったという事ですね」
「ポーニ」
ポニ子はそのラパンさんの言葉に大袈裟に溜めを作って頷いた。それを見て「わかりました」とラパンさんもうなづく。それから色々な所へと指示を出し始める。
きっと信じてくれたんだろう。これで王様達がここに来た時に何のお出迎えもなく「不敬だ!」と問われることもないだろう。
「さて、私はどうしようかな……」
不測の事態に備えて、私も動いた方がいいだろうか? 流石に勇者一人で王族を全部守れって言うのは酷かもしれない。いや、実際大丈夫だとは思う。
なにせこれまでの人生で沢山の人を守ってきたであろう勇者だ。守ることは慣れてそうだし。それにそんな人生を積み上げてきた時よりも今の勇者は強い。
そして大体この世界には、私たちの脅威になりそうな存在っていないし。私が遊び半分で作ったあの砂獣がやばかったけど、けじめはつけたからね。
あれが自然発生するとしたらヤバいとは思う。でもそんなことはたぶんない。あのレベルの砂獣が発生するのなら、たぶんこの世界はとっくに滅びてるだろうからだ。
この世界を管理してるであろう存在は、そこら辺のバランスには敏感みたいだしね。だから勇者だけでどうにかなると思うけど……
「私がここから離れてる間にアズバインバカラが襲われても困るしね」
『そうですね。行動を開始するのは勇者が帰還してからでいいでしょう』
「そうだけど気になるじゃん」
ここずっとこの場から動いてないからね。動きたいって気分ではある。まあ動くって言っても、実際私はこの場所から動けないんだけど……
「私って運動不足とかなるのかな?」
『今更な疑問ですね』
すぐさまAIに突っ込まれた。