「どうしよう」
私はこの世界に来てから勇者と魔王、後はポニ子か……その三人以外とは喋ってない。なにせG-01は機械というかロボットじゃん。大きいけど、機械だから拝まれるんだけど、なんかそういう生物……というかペットというか……そんな風に思われてるよね。
それに勇者も魔王もキャラとして濃いから、G-01の様な存在を従わせてるってのもなんか納得されてるんだよね。しかも二人ともその強さを遺憾なく見せつけてるしね。この世界の者たちではたどり着けないその力の境地に二人は達してるわけで……それならこの巨大な存在を従わせてるのも納得だ――となってる。
まあ私的にはそれでいいと思ったんだよね。なにせ私に煩わしい話が来ずに勇者と魔王の方へと行くだろうと踏んだからだ。そしてしゃべれない無機質な存在となって自由な時間を過ごす……という計画だったわけだ。
結構概ね上手くいってたんだけどね。途中で完全に自立して動いてるってのがバレたけど、まだセーフだよ。でも……
「更に喋れるってバレたら、勇者や魔王には頼みづらそうな雑用とか頼まれそうだよね」
なにせ私はこの世界の……というかアズバインバカラの人達の中の認識では魔王や勇者よりも下の立場に私は成ってる。うん、自分でそうしてしまったわけで、そうなると勇者や魔王に頼むほどではないけど、こいつでかくて力ありそうだし、力仕事やらせようぜ!! ――とか成る可能性がある。
それははっきり言って――ヤダ!! 絶対にヤダ。
「でもしゃべる以外で情報を伝えるとなると……」
手紙とか? いやいや文字で意思疎通が出来るとわかったら喋れることと同じだよね。
「なら……ここは私はただの勇者とラパンさんの中継役に成るしかないよね」
その結論にたどり着くまで時間かからなかった。そして……
「AI、とにかく普段から記録用に撮ってた勇者の映像を出して」
そんな指示の元、AIが勇者の映像をモニターに映し出す。丁度正面向いてて、口の動きが合いそうな奴を探して……多少は口の動きとか編集でどうにか出来るでしょう。
後は背景でおかしいと思われたらイヤだし、黒く潰しておくか。そうやってさっきの会話と念のためのシミュレーションしたラパンさんとの会話で出てきそうなやりとりをいくつか切り貼りしておく。
「よし!」
動画編集なんて初めてやったが、案外出来る物だ。てかなんか直感的に出来た。G-01は本当に優秀だね。というわけで、私は奥に引っ込んで行ったラパンさん達を視界のセンサー切り替えてさぐり、宮殿を回り込む。
この世界、暑いから風通し良く作られてるし、今丁度王様達を通してる部屋は普段からラパンさんが偉そうにしてる一番広い場所だから、私が来たことにもすぐに気づくだろう。
そして案の定――
「ジゼロワン殿、どうかなさいましたか?」
――私がわざわざ姿を見せたことに疑問を投げかけるラパンさん。ここで声を出して応答しちゃいけない。ただ私は勇者から預かった情報を知らせるだけ……その役に徹するのだ。私は映像をみせ……みせ……なんかいきなり画面に画面投影の文字が。よし――と思ってそれを押した。
するとG-01の目から何か光が伸びて、それが空中に勇者の姿を現した。凄い。
『緊急事態です。大量の砂獣……千は居るかと』
「なんと!」
「わかりました。すぐに手配いたしましょう」
うむ、私の編集技術の高さでまさに二人が会話してるかのようになってる。満足満足。