「やっぱりこいつの身体的構造というか、構造体系というか、そういうの、ピローネと類似点が多いね」
『結論からいいますと、この化け物もこっちの幼女と同じ……元は人間ですね。同じように魔法で体を変化させたのは間違いありません』
「だね」
私は蜘蛛人間をピローネと並べて観察、いや診察? してる。それによればやっぱりだけど、蜘蛛人間とピローネは同じだ。形は全く違う。それになんかピローネはなかなかに神々しい感じになってるが、蜘蛛人間は率直に言って気持ち悪い。だってピローネちゃんは綺麗だと思えなくもない。けど蜘蛛人間は綺麗だと思えるようそない。いや、その目を塞いでる装飾とか、なんか顔にジャラジャラ付いてるアクセサリーはなかなかにうーん……それを見る度に奴の顔面を見ないといけないのがマイナスだね。
別に美形ってわけじゃないし……普通におっさん顔出し……まあ目力とかはわかんないからもしかしたら開眼したら印象が変わるのかも知れないけど……今は見てる限り、醜いね。ピローネも今の姿になってなんか表情的な物はなくなったらしいが……やっぱり人ではなくなってるから、そこら辺の人間らしさ? 的な物はそぎ落とされてしまうのだろうか? けどこいつも、ピローネちゃんも心的な物は残ってるみたいだよね。まあそれがある意味ピローネちゃんにはとってはつらいことになってるような気がするけど……でもこの蜘蛛人間は全てを受け入れてる感じではあったな。
「ふむ……」
私は更に詳しく二人を見ていく。一応ピローネちゃんの事は既に詳しくはスキャンしてるから、やっぱり目下は二人の違い。でもなんかより複雑というかなんというか、蜘蛛人間はなんか情報密度が濃い。ピローネちゃはまだスッキリとしてるように情報的には見えるんだけど……蜘蛛人間は色々とごちゃついてるというか……それこそ部位ごとに様々な情報が違ってる形跡がある。たしかに表面は同じだ。でもそれは同じに見せてるだけ……のような?
見た目に同一感を出してるだけのような……G-01的にいうのならいろんな素材で各部位のパーツを作ってその素材の色のままだとちぐはぐになっちゃうから塗装で統一感を持たせました! ――的な感じだ。
『何か一部を切り取ることとか出来ませんか?』
「うわ、何猟奇的なこと言ってるのよ」
なんかとんでもないことをAIが言ってきた。一部を切り取るって何? 脚でも切れって? まあそれなりに多いし、一本無くなっても……と想わなくもないけどね。
『そっちの子供を救うためです。この蜘蛛人間はかなり複雑みたいですし、もっときちんと調べれば、何か分かるかも知れません』
「ふーん、まあこのおじさんはどうでも良いしね」
老人と子供……どっちを救うかというと、子供だろう。老人はもう老い先短いだろうしね。この状態の化け物にその意見が通るかは知らないが……でも長く生きてることは確かだろうし、ここは後身のために一肌脱いで貰おうか。
「ちょっとでいいの? それともそれなりにあった方が良いの」
『そうですね。次にサンプルが採れる保証はありません。脚一つくらいは貰っておきましょう』
うわー、大胆に出たね。けど確かにこのチャンスを逃したらもう二度と無いかも知れない。こいつは教会のお偉いさんみたいだし、教会と対立する――と言ってもこいつをどうするかはラパンさん達に任せるつもりだしね。ならここでうっかりやっておかないと、正当な理由なんて提示できないしね。
『脚一本欲しいんです』
なんて……ね。と言うわけで私はまだラパンさん達を呼びに行った奴が戻ってこないうちにサクッと蜘蛛人間の脚を一つもぎ取った。
「うわぱっちい……」
うん、見てて気持ちいいものじゃない。マジ絶対に。