「一体何をする!!」
私の行為を見守っていた軍の残った人がそんな非難の声を上げてきた。まあわかる。何せいきなり私は蜘蛛人間の脚をもぎったのだ。これには驚くだろう。一緒に居たネナンちゃんおつきの侍女の人とか倒れたし。ネナンちゃんは大丈夫のようだったけど、流石にちぎれた脚を見たら顔を青くしてる。まあそうなるよね。
でも理由を説明しようにも、私は喋れない設定なのだ。だからほら、そこは察して欲しい。これは必要なことなのだ。特にピローネちゃんを救うためにはね。
「ま、待ってください!」
ネナンちゃんは侍女の人をその膝に寝かしつつ軍の人に声を掛ける。ちょっと、侍女が主人に介護されてどうするんだ――といいたい。いや、本音は私もネナンちゃんに膝枕して欲しい!! うらやましい!! だけどね。ネナンちゃん最近は食べるものも着る物も、それに手入れだって完璧にされてるせいだろう。同年代の子達に比べてひときわ可愛くなってる。そんな子に膝枕って……全男子の夢だよそれは!! うらやまだよ!!
『アホなことに脳のリソースを使わないでください』
「うっさい、これは大切なことなんだよ。それに今の私の脳みそはこのくらい片隅ですぅ」
AIの奴が何やら文句たらたらだけど、私の脳をどう使おうが私の自由だろう。
「ですが……あれは捕虜を勝手に……」
ああなるほど、軍の人が怒ったのは別に脚をもぎ取ったからではなく、捕虜となった人物へ勝手に私が色々とやったからなのか。人権……とかではなさそうだね。何てひどいことを……とか思ってるのかと思った。実際ネナンちゃんはそうだと思う。でも軍の人は捕虜だから何でも上の指示を仰いで行動したいのかも知れない。めんごめんご。でも私は別に軍属ではない。まてよ? でも私先の戦いで王様の言葉に応えて現れたような演出をした。もしかしたら王様の所有物とかに見なされてる可能性はある。
いや勿論ラパンさん達はそんなことを思うとは思えない。私や勇者、それに魔王が自分達に御せるとは思ってないだろうからね。でも王様はどうだろうか? 私的には権力者の印象って『わはははは! この世は我の者だ!! 全てが我にひれ伏せ!!』とかなんだけど。
(まあけどあの王様はそんな人じゃないか)
ここ数日、私は色々と王様達を観察してた。G-01はやれることが増えたのだ。前も指を飛ばして目の代わりにしたり、余剰の力を使って機械を生み出してネットワークをこの世界に作ってたりもしてた。それから更に強化されたG-01なら更に出来ることは増える。てかこのアズバインバカラくらいの範囲なら、別に指を飛ばさなくても普通に見える。音だって拾える。てか全部の音を拾ってる。
ただいつもはそれを聞いてなんてない。そんな盗聴めいたことはしてないからね。でもその中から必要な物を選りすぐって情報にするって事は簡単にできるのだ。今までは壁伝いを見るにはそれこそサーモグラフィーとかで鮮明ではなかった。だから別にカメラを用意したりしてたけど……今やアズバインバカラの情報は完璧にG-01の中にはある。
それに人々の情報もね。声の波長、動き、それらを判断したら誰かなんて分かる。壁越しであってもその部屋の様子だってCGで再現してしまう高性能さだ。だから私はG-01の中に居てアズバインバカラの全てを把握することが出来る。
それで見た感じ、あの王様、とても私が想像してた王様らしくない。全然威張らないし。寧ろ皆に気を遣ってる。はっきり言って、今までの教会からの扱いが見えてきて涙ぐんじゃうよね。