とりあえずこのことはラパンさんへと報告する必要があるだろう。なにせ世界の空には中央から広がったおかしな模様がすべての空へと広がってる。まあけど、最初はとても主張してたそれらも今やなんか薄くなってて、よく目を凝らさないと見えなくは成ってる。
けどよく見れば見える訳で、なくなったわけじゃない。とりあえず私はネナンちゃんの特訓に付き合ってた勇者へとこのことを伝えて、勇者経由でラパンさんやら王様に伝えてもらうことにした。きっと今も緊急会議でもしてるはずだ。
実際、今残ってる街のトップたちがここ、アズバインバカラへと集まってきてて、もちろんそのまとめ役となってるのはラパンさんだ。王様は確かにトップではあるけど、トップなだけでいろいろと指示をするわけじゃない。それをやるのはラパンさんの役目っていうね。実際、この世界の事、それに様々なことを経験してきてる、言ってしまえば社会経験豊富なラパンさんの方がそこらへんうまくやれるってことだ。
確かに王様は偉いが、王様は中央から出たことなんてない。それに……だ。王様は中央ではお飾りだった。ただ教会が決めたことを「王の名のもとに」という名目で発信するためだけの役目だった。そんな王様が常識なんてものを持ち合わせているのか? っていうとね。
別に王様は偉ぶったりしてないし、今からでも学んでいこうとしてるなかなかに貴重な王様だと思う。お飾りでも煽てられてたら普通の人なら「自分は偉いんだ!」って思うだろう。それに普通ならお飾りでも操り人形でも、気づかない。でもこの王様は自分で気づいて、そしてこのままじゃだめだと思って行動したんだからなかなかにいい王様だと思う。
今だって、実際ただラパンさんにすべてを任せてるわけじゃない。本当にただのお飾りで良いとか思ってる王様なら会議とかに参加せずに事後報告だけで済ませるだろう。
でも王様は教会から出で、なかなかに積極的に勉強してる。なので今回のことも、わからないなりに会議には参加すると思う。
「勇者様?」
「ああ、ごめん。ちょっと急用ができた」
「ジーゼ様からの情報ですか?」
ネナンちゃんに特訓を施してた勇者が私の報告を受けてラパンさんたちのところに行こうとしたら、ネナンちゃんがそう言ってきた。最近、メキメキとネナンちゃんの勘が鋭くなってきてる気がする。
「私も連れて行ってください! お願いです。お話は分からないかもですけど、私だって無関係じゃないはずですよね?」
ネナンちゃんは前までは力を使うことも自覚することも消極的だった。だからきっと以前なら「行ってください」とか言ったと思う。けど今は「連れて行って」……か。
やっぱり両親との別れ……ちゃんとした決別が彼女を一つ、強くしてるみたいだ。