uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 506

「それってどういうことですか? 神様がいるのはなんとなく信じては居ますけども……」
 
 この世界は……と言うか世界全体というかなんというかは不思議で満ちてる。そこには所々に意思のような物を感じることだってあるんだ。だから神……と呼ばれる存在は否定なんてしない。でもそれが言葉通りの全知全能な何かなのかと言われるとそれはどうだろうと思ってたりもする。
 なにせジゼロワン殿何かは下手したら俺たちやこの世界の人達にとってはそれこそ神と間違われそうなくらいのことをやってのけてると思うんだ。今だって物資を殆ど使わずにエネルギーだけで何かを作ってくれてる。それって普通に考えて凄い事……凄すぎることだ。
 エネルギーだけで物質を精製してるっことだからな。自分には出来ない。
 
「分からんよ。儂等のような下々の存在にはの」
 
 ここで自分を下々とか言ってしまうのが、今までの境界の奴等とはこの蜘蛛人間が違うところだな。他の奴等なら絶対に自分達を下々に含ませたりしないと思う。それだけ教会の奴等は自分達が上位の存在かのように思ってる。地上にいる民達を見下してるからね。
 でもこの蜘蛛人間ヌポポの言うとおりにもっと上位の存在からしたら、自分達にはきっと大差なんてないんだろう。だからこそ自分さえも下々と言えるだけの度量がこいつにはある。
 
「だがこの世界はひどいと思わんかね?」
「まあ確かに……」
 
 ここにこの世界の住人達が居るのにそれを呟くのはどうかと思ったけど……実際この世界はひどい。殆ど砂とかしかないし、何せ一番ひどいのは時限爆弾が最初からセットしてあるところだろう。人々は生きる為に戦いを避けることが出来ない。
 だって砂獣に潰されていくと、どんどんと砂の嵩が上がって太陽に近づいてしまうんだからな。最初からこの世界は時限爆弾のタイマーがセットされてるような物だろう。それはひどい世界だと思う。
 でも……待てよ。
 
「考えたらそれをひどいと思うきっかけってなんだったんですか? この世界に生まれた人達は普通はこれが当たり前だと思うのでは?」
 
 そうなんだよね。実際ここに居る人達だって、自分達の世界の話を聞くまではこれが普通だと思ってたみたいだ。まあだからこそ、あんまり自分達の世界の話しはしないで欲しいというか……そんなことをラパンさんには言われてたりはする。そういう時限式じゃないって部分だけを話さないでくれれば良い――ってだけだからそこまで厳しい物でもないけどな。でも実際誰もが別の世界はこうじゃない――とかなったらショックが大きそうだからな。
 そうなるとどうなるか……教会に更に依存するのか……それとも自殺者が多くなるのか……それは分からない。けど普通は誰かがその当たり前に波紋を広げるような何かを与えないと、常識って崩れる物じゃない。教会ってずっと昔からあるみたいだし、それを与えた物が居るんだよな……
 
「いつの時代も、世界でも人はただ死を待つだけではないのではないのかな? そうではないか?」
「自分のように誰かが伝えた訳じゃなく、純粋にこの世界に疑問を持った人が居たって事ですか? ああ、それが貴方たち伝道師とか」
 
 それが一番納得できる。なにせ教会のトップなんだからな。けどそこで蜘蛛人間ヌポポは首を横に震った。
 
「いや、それは儂等ではないの。何せあの方は人の寿命を全うしたのだからの。儂等はその言葉を伝え続けてるだけに過ぎぬよ。だからこそ伝道師なのじゃ」
 
 遠い目をして蜘蛛人間ヌポポはそう言った。