「「ヌポポ様!!」」
なんとか尻から糸を出してゆっくりと床に近づいてく。だが……その呼吸は荒い。それに少しでも油断したら、意識が途切れて、この糸を維持するのも難しくなりそうな……それほどに体調が悪かった。秘密裏にこの場所で話し合ってた二人は儂が現れた事に最初は驚いておった。だが、どうやら儂の様子がおかしなことに気づいたらしい。
息も荒いしのう……
「おお……すまんの……」
なんとか地面についたが、足に力が入らん。そのせいで、二人に支えられて、なんとかゆっくりと床にへたりこむ。この老骨には衝撃はちと厳しい。なにせ体の芯に響くような衝撃はきついからの。なので助かった。
「ヌポポ様、一体どうなされたのですか? それに……一体いつから……」
なにやら罰が悪そうな……そんな言葉を一人が紡いでおる。まあ仕方ない。なにせこの二人は秘密の会話をしてたのだろう。儂は普段から部屋とかにはおらずに天井に巣をつくったりしておるから、少しは天井にも気を付けるべきであったな。
長く教会を離れて、人らしい暮らしなどしておらなんだ。だから豪華絢爛な暮らしをしてるこの者たちには儂の行動なんて理解できないのだろう。
だがそれでも儂はこの教会の古参である。だからこそ、この者たちもこうやって心配してくれておる。
「わしはこの広い空間が巣を作るのにちょうどよかったのでな。それよりも……儂に聞かれたことよりも、敵に聞かれたことを心配した方が……よいぞ」
「まさか、ここは教会の深部。入ってこれるわけが――」
「普通はそうじゃろうな。だが、そうではない者たちがいるであろう。その者たちの話をしておったのではないか?」
「――まさか勇者の刺客が?」
「そうかもしれん。一応潰しておいたが……どうやら毒をもらったようじゃ」
潰した瞬間、何やら巻き散らかされた。それを浴びると、肌にが焼けるように熱くなり、そして呼吸もしづらくなった。とんだ置き土産じゃよ。
「は、早く回復魔法を」
「よい、この程度。儂の回復力で大丈夫じゃよ」
かなりの毒だったが。すでに体の中で解毒薬を作り出した儂なら、死ぬことはない。だが他の者たちには怪しいクモがいても潰したりはしないように警告しておいた方がいいだろう。
なにせ、この毒。人間なら耐えられるはずがない。それだけの猛毒じゃった。