さて、悲しいお別れもあったけど、実際の問題はこれから……というか、既に出てるというか……まさかまさか……魔王がこんなに慕われてたなんて思ってなかった。
「そんな!」
「なんで兄貴が行っちまったんだ!!」
そんな事を言ってるのは、ジャルバジャルにいた人達だ。そのなかでもこのジャルバジャルを復興するために初期から魔王の手足となって働いてた人達。
「そうですか……魔王様は行ってしまわれましたか」
そしてジャル爺もそんなことを言ってる。ジャル爺はジャル爺なんて呼んでるが、既に見た目は全く爺では無い。普通に若返って見た目は二十代の健康的な筋肉青年になってる。そしてジャル爺はこのジャルバジャルの将軍的なポジションだ。まあつまりは戦闘面では一番上の立場って奴だね。実際今まででもずっとそれは変わらなかったんだよね。なにせ魔王には役職的にはなにも肩書きとか無かったし。ただ、皆が魔王を恐れてただけで……
(とか思ってたんだけど……)
どうやら想像以上に魔王は慕われてたみたいだ。恐れられてただけじゃ無かったんだね。たしかにラパンさんの息子とかは魔王を恐れて媚び売ってたのに……そんな息子でさえ「兄貴ぃぃぃ!! なんで行っちまったんだよ!!」とか泣き叫んでるからね。
唯我独尊してると思ってたけど、ジャルバジャルでは上手くやってたんだね。勇者と一緒にいると、勇者のまわりには沢山人が集まって、魔王は大体一匹狼してるから、絶対に他人とのコミュニケーションに問題を抱えてると思ってたんだけど……
(でもこれって元々ジャルバジャルの復興のために最初に荒くれ者共を先発したからだよね)
きっとそういう理由で魔王と波長が合う奴等が多かったんだと思う。そもそもが皆には一時的に離脱する……くらいにしか言ってなかった。だってそもそもか魔王もここで離脱するなんて思ってなかったからね。
だからジャルバジャルの人達にとっては突然のことに困惑するのも仕方ない。アズバインバカラでも魔王が戻ってこないって事はラパンさん達にも伝えた。けどそこまで重くは受け止めてなかった。
「残念です」
とは言ってくれたが、そこまで深刻じゃ無いのは私や勇者がアズバインバカラにはいるからだ。でも……危機感はちょっとは芽生えて欲しいよね。だって私達だって魔王みたいにならないとは限らなく無いだろうか? まあネナンちゃんがいるからその確率は低いけど……でも絶対では無い。ネナンちゃんがサンクチュアリとはまだわかんないし。
とりあえずジャルバジャルには魔王の穴埋めとしてアイを向かわせた。なにせ流石に魔王という戦力が行き成り欠けるのは痛いからね。魔王と同等くらいのスペックは持ってるアイを向かわせるのが一番だったんだ。
だって私も勇者もアズバインバカラでの人脈がもうある。いや、私には人脈はないが……なんかアズバインバカラの守り神的なポジションに着いてるからね。なら新人のアイしかジャルバジャルへと行かせることができなかったのだ。
「大丈夫かなあの子?」
私はそんな不安を抱えてるよ。