「別に何か特別な事があったということもない。なにせ特権持ちたちは肩書の癖になにか仕事をやってるわけじゃない。だから出勤しないなんてことは普通にある。そして……」
ここで一つ間をとるおじさん。一体何が? と思ってると、そんなにすごくないことを深刻そうに言ったよ。
「私たち的には彼等には出勤なんかしてほしくないと思ってるからな」
更に最後に大きなため息をはくおじさん。この人の苦労が伝わってくるようだ。てか、おじさんだけじゃない。きっと宮殿でまともな仕事をしてる人たちは皆思ってることだろう。実際、そんな人達がどれだけの割合いるか……知らないけどね。
ただ邪魔しかしない上司……なんて確かに出勤しないほうがいいね。そんなの仕事にならない。別に何もしないのならいいけど、そういう奴ってなにか余計なことをするじゃん。それが一番嫌だよね。それなら出勤なんてすんなって思う。
だから三日も放置されたのね。でも彼女『ヌメリア』さんも三日も気絶してたのはまずいと思うんだけど? そもそもが宵が明けると目をさますものでは? まあそこは絶対とは言えないけど。絶対的には世界は宵に入る前に眠りにつくようにこの世界は出来てる。けど、その前から寝てたり気絶してたりしたら、宵が開けたら勝手に目覚めるって訳でもないのかも?
「彼女も三日も気絶してたのは確かに変だったが、他殺の線はなかったからな……」
『それで彼女には罪は問われなかったと……』
まあ三日も発見されなかった理由は納得できた。皆うざったく思ってたからこれ幸いと誰も触れようとしてなかったってことなんだね。いくら好き勝手出来ると言っても、誰からも心配もされないという関係性しか築けてなかったってことだね。
ある意味でかわいそうである。まあきっと同情する余地なんて無いくらいの糞だったんだろうけどね。
「ん……んん」
私たちが話し合ってると、彼女がもぞもぞとしだした。どうやら起きそうだ。彼女がどこまで教会に繋がってるのか……それが曖昧だからもう一度気絶させた方がいいだろうか? 話を聴きたいが……教会に支配されてるとなると、ここでバトル可能性も……彼女は全然強そうに見えないが、都市核を内蔵してる。しかも2つだ。もしかしたら危機に直面したらなにか特別な事が起こるように教会に調整されてる可能性はある。
『もう一度行っときますか?』
私はバチバチとドローンをさせながらそういうよ。けど勇者が首を横に振るう。
「彼女がどこまでしってるのか……そして今もちゃんと彼女自身としての意識があるのか……それを確かめる必要がある。自分たちは姿を隠しておきます。上手く彼女と話すことは可能ですか?」
なんかとっても嫌そうな顔をするおじさん。だけど彼女がイシュリ君の事にも関わってるのは確実で、そしてその裏には教会が居るわけだから、そこにつながる線をおじさんだって欲しがってる。だから不安そうだけど、首を縦に振ってくれた。
「大丈夫ですよ。自分たちはここにいますから」
そう言って勇者は魔法で姿を隠してた。私も光学迷彩を使ってドローンの姿を隠すよ。