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「はあ……疲れた」
今日も今日とて陽キャたちと関わってしまってかなり疲れた野乃野足軽である。野乃野足軽に関わって陽キャ達は平賀式部への足がかりを得ようとしてる。でもだからこそ……そんな下心が透けて見えるから、上辺だけ。上辺だけの関係でお世辞の笑いを作って、お世辞の話題に花を咲かせる。そのせいで、いつもよりも何倍も野乃野足軽は疲れてた。
(流石にあれは友達とはよべないよな)
ある程度友達と呼べる人達が必要だと思ってる野乃野足軽だが、今すぐにほしいほどに飢えてもいない。野乃野足軽は別に一人でも孤独を感じるようなタイプではなかった。だからこそ、今までだって大抵は一人でいるが、それでも誰とも関わってこなかったわけじゃない。クラスメイトとは近くもなく遠すぎない距離を保ってた。
特別親しい関係の人は居なくても、特別仲悪い人だっていない。だけどこういうのはなんか違う……と野乃野足軽は思ってる。自分にだって、友達を選ぶ権利はある……と。別に彼らが直接ぶつかって来るのなら……と思う。もう潔く「平賀さんを狙ってるんだ。だから利用させてくれ」とか言ってくれたら、ある意味でアッパレと野乃野足軽は思っただろう。
けどまるで友達のようにしてきて、けど友達じゃなくて、ただ利用しようとしてるだけ……それはやっぱり違うんじゃないかと思って疲れる。でもだからって本来の野乃野足軽の性格上キツく言うことも出来なくて……彼らとの会話がどうしても意味なんてない、無駄な時間に思えるんだ。だからこそ余計に疲れるっていうね。
「さて、帰るか」
さっさと帰って超トレをしないといけない野乃野足軽は早速足を自宅の方向へと向ける。けどそれに異を唱える声が自身の中から聞こえてきた。
(待ったください。私はデザートを所望します)
(いや、それ買うのは俺だぞ。買ってほしいならお金を生み出せ)
(命を売る方法はありますか?)
(なんか闇の取引みたいだなそれ……)
アースの言葉にドン引きする野乃野足軽。どうやらアースの中では命よりもデザートのほうが価値が高いらしい。まあアースにとっては命なんてのはいくらでも生み出せるものなんだろう。
(命を売るなんて出来ないけど……力を使って金を稼ぐってのは考えてなかったな……)
力を高めることや使うことに楽しさを見出してた野乃野足軽。それを使ってお金を稼ぐって考えはなかった。どんな楽しいことが出来るのか……そう言うことばかりを考えていたようだ。すぐに思い浮かんだのは動画投稿だ。マジックと言い張って力を使えばそれなりの事が出来るように思える。マジックじゃないから、種も仕掛けもいらないから、費用なんてゼロ円だ。
今の時代、動画を取って編集して、投稿までもスマホで完結できる。スマホがあればなんだって出来る。いい時代になったものだと野乃野足軽は思った。
(でもすぐにお金が入るかというと……そうじゃないよな)
そもそもが収益化されるまでにもラインが有ると野乃野足軽も聴いたことがあった。そして色々とスマホでマジック系の動画チャンネルを検索してみる。そこそこあって、登録者数も結構ある。やっぱり別に言葉がわからなくても観てたらわかるから、ワールドワイドで勝負できるって事もあって、色んな国の人が上げてるようだ。
それに短いのは一分も……それこそ30秒とかそんな短いのも無数にある。
(これは競争率高そうだな……それに既に種も分かんないの一杯だし……)
どうやら知らないところでマジックも進化してるらしい。それこそ最高峰は陽キャたちにも教えたMr.ゴッドだろうが、それ以外にもどうやってんの? 的なのは結構ある。まあけどやっぱり格が違うのがMr.ゴッドというだけで。ここに今から絡んでいく……というのは厳しいのでは? と野乃野足軽は思った。それこそ今の自分の力では……っし感じだ。
(それにもし万が一だよ? 組織に目をつけられた困るしな)
(組織とはなんですか?)
(組織は組織だよ。きっとこの世界を裏で牛耳ってる組織がいるはずだ。そういう奴らに目をつけられて消されたくないだろ?)
(そんな組織があるのですね)
(たぶんね……)
そんなのいるかどうかなんか野乃野足軽は知らない。知らないが、居ないなんて保証もないのだ。アースなんて存在が居たように、そういう存在が居ないなんて言えないから、あんまり動画とかで証拠を残すようなことはしたくなかった。野乃野足軽は遅い中二病に入ってるようだ。けどそれも力と言うやつに目覚めてしまったからにはしょうがないとも思える。