(となると、やっぱりまずは超トレを頑張るしか無いよな。帰ろう)
(待ってください。たしかに貴方の力はまだまだ弱々です。ですが私たちが力を合わせると出来ることは多いはずです)
(えー、けどそれって結局俺にはあんまりメリットが無いというか……)
野乃野足軽はあまり買い食いをするタイプでもないし、なにか物を欲しがるタイプでもない。だから今すぐに現金が必要ってこと無い。それってつまりは別にどこかに寄り道するくらいのお金には困ってないってことなんだが、元来ケチというか節約家の野乃野足軽にとってはそもそもがアースが欲しい物を自身のお金で払ってやるっていうことが納得できないらしかった。
だから自分のためにさっさと訓練をしたい野乃野足軽である。
(訓練だけでどうするのです。もしもその組織という奴らがいるのなら、実践を経験しといて損はないでしょう)
(でも実践って言ったって……何を……)
(ほらほら、これを観てください)
「うげっ!?」
そう言っていきなり野乃野足軽の首がグワンと曲がった。通行人が今の野乃野足軽の首の動きを観てたらびっくりするだろう動きだった。実際野乃野足軽はいたがってる。
(お前な……いきなり俺の体を操るなよ)
アースは野乃野足軽の血液に入ってるからその気になればその体を操ることが出来るのだ。なのでさっきの不気味な動きはアースが体を操ったせいだ。そのせいで野乃野足軽は首を痛めた。
(そのくらいすぐに直せるでしょう)
(回復的なことってわかんないんだが? やったこと無いし)
(とりあえず冷やすだけでも違いますよ)
(お前な……)
適当な事を……そう思う野乃野足軽。とりあえずよくわかんないから、力を痛みの部分に集中してみた。もしかしたら感覚が鋭くなって更に痛くなるかも……と思ったが、なにやら違う。痛いところが明確になるような……そんな感じだ。筋が痛いというか、細胞の中身がわかるというか……更にそこからどうしたら良いのかを考えて、力に対して「痛いの痛いの飛んでいけ」と念じてたみた。流石に本人も「こんなので……」とか思ってたが、なんか痛くなくなった。
「まじか……もしかして俺の力って万能なのでは?」
最初はただの超能力的な力に目覚めたと思ってた野乃野足軽だが、最近の出来事を通して、実はもっと魔法的な……それこそ超常的な力の方ではないか? とか思い始めた。まあけど超能力も魔法も区別なんてわかんないから、野乃野足軽は不思議な力……でいいかと思ってる。
「これって迷子の犬?」
首を痛めてまでアースが見せたかったのは電柱に貼られた迷子の犬のポスターらしい。比較的新し目のポスターだから最近設置されたのだろうというのがわかる。
(まさかこれを探そうと?)
(お礼を支払うと書かれてます!)
(でもこれってお金とは限らないというか……そもそもがこれだけの情報でこの犬を探すなんて無理だろ。これだって見かけたら連絡をお願いしますってやつだろ)
(力を使えば探せます!)
(なに? 他の犬にでも情報提供をお願いするとかいうのか?)
(そういう方法もありますね)
(え? まじ?)
思いついたことを言ったつもりだったが、どうやら力を使えば可能らしい。でもよく考えたらこうやってアースと話してること、そしてアクア、先日生み出した石の言葉がわかったこともある意味では同類……同種の力の使い方なのかもしれない……と野乃野足軽は思った。