「凄い……」
彼……ここサーザインシャインインラの軍団長というか部隊長というか、そこそこ偉い隊長さんの一人である彼が1番に私が持ってきた武器を手にとって戦ってる。そしてそれをドローンたちを通してこの市街の教会に避難してる人達に映像として見せてる。同時にオアシスの中央にある宮殿の方にも中継してる。そっちにも一応武器は回してるが……実際、こっちが本命だと思ってる。だって宮殿の方にいるのはお偉いさんたちだ。
奴らはたとえ強力な武器が目の前にあったとしても使うだろうか? きっと使わないような気がする。だって偉い彼奴等は自分で戦うなんて発想はきっとない。でもこっちの市街の普通の人達はそうじゃないだろう。
生きるためには戦わないといけない……という意識は有るはずだ。他の街よりもその意識が低いとしても、有ると思ってる。そして事実、隊長さんの活躍を目にして顔を上げてる。さっきまでは死を恐れて、皆が床を見つめて震えていた。お祈りを捧げるしか出来なかった。けど今は、もしかしたら……という胸騒ぎがその胸の奥に生まれてるはずだ。けどまだ足りないようだ。
それはなぜかというか……
「けど……あの人は特別だ。俺たちが砂獣と戦えるわけがない……」
「ああ、あの人は、天才だからあれだけのことができてるんだ……」
「それにあれだけやれるんだ。きっとあの人が……軍がなんとかしてくれる」
「ああ、これで俺たちは助かるんだ!」
――とかいう困った方向にいきかけてる。これはまずいね。とりあえずここは私が事実を端的に伝えておいてあげよう。本当ならドローンの私ではなくて美女のヌメリアさんや庶民にとってはお偉いおじさんであるコルドバさんが話した方が良いんだろう。けど彼らは宮殿の方にいるからね。勿論私もドローンの何機かは向こうにあるが私は大量のドローンでこのサーザインシャインインラの状況を誰よりも把握してるからね。
どこにでも私はいるんだよ――って状態だ。なのでここの担当は私だ。私は武器を無言で出して、映像を出しただけだからね。ここに避難してる街の人達は何もわかってない。波だって今回が初めてだろうし、めっちゃ強くみえる隊長さんを観てると、勝てる……とかんじてしまうかもしれない。
でも……そんな訳はない。私や勇者くらいになると、たしかに一人でどうとでも出来るが……流石にそこまで強化されてはないよ。いや、実際ちょっとびっくりはしてる。だってなんかめっちゃパワーアップしてるし。なんで金髪になってオーラを出してるのか……私にも分かんない。
『それは無理でしょう。いくら強い武器を持ったとしても、彼だけではこの窮地を脱することは出来ません。それは今生き残ってる軍の人達が参戦したとしても同じです』
私はなるべく機械的な音声を心がけて言葉を発したよ。そうした方がなんか良いかなって思って。するとここの人達は「そんな……」とか言って再び下を向く。この中に僅かでも自分も……という人がいたら良いんだが……どうやら彼らの中では隊長さんも別格らしくて、彼ではどうやらそのきっかけにはならないらしい。彼はたしかにここの人達の希望にはなれる。
けど遠すぎる存在だから、届くとは思えない……みたいな。そうなるともっと身近に感じれる……それこそ彼の部下たちが立ち上がってくれるのを願うしか無い。