「そ、そういう事はあんまり簡単に言わない方がいい」
野乃野足軽はなんとか理性を総動員して、平賀式部にそんな忠告をする。なにせ今平賀式部は「なんだってする」って言ったんだ。そんなことを可愛い子が言ったら、もう言質を取ったのと同じだ。悪い男ならそれをかざして一体何を要求するのか。
そんなの絶対にエッチなことを要求するに決まってる。平賀式部のその服の下に隠されたまっさらな身体に興味が無いやつなんていない。誰にも触れさせたことがないであろうその体は一体どうなってるのか……皆が興味津々なんだ。
でも直接的に平賀式部に指摘するのはどうかと……野乃野足軽は思った。だって平賀式部は見るからに純粋そうだ。自分がそういう目で見られてる……なんて思ってもないかもしれない。
「えっと、悪いやつも居るかもしれないし……」
「野乃野くんは悪いやつなの?」
「俺は悪いやつじゃないよ」
「じゃあ大丈夫だね」
「そ、そうだね」
平賀式部の笑顔に簡単に陥落した野乃野足軽である。その際、平賀式部は見えないように拳を握りしめてた。さながら小さくガッツポーズをしたかのように。
「えっと、なるべく一緒にいてくれる?」
「でもあんまり相手を刺激するは危ないような……」
「…………それもそうですね」
明らかに落ち込む平賀式部。それを観た野乃野足軽はなんとか安心させようとするよ。
「大丈夫。気にして平賀さんを見てる。いつでもさ」
いってから野乃野足軽は「この発言キモくない?」とか思った。だっていつでも見てる……といったと同義だ。これはある意味通報されてもおかしくないというか、ストーカーの言い訳みたいだ――と思った。
「本当ですか?」
「いい……の?」
きもがられたのでは? とか思った野乃野足軽だが、なんか平賀式部には好感触だった。
「勿論です。私を気にしてくれてる人がいるって分かるだけでも安心できます」
「それなら、いいけど」
「いつでも見てていいですからね」
なにやらそんな念を推してくる平賀式部。その言葉はどこかおかしいんだが、野乃野足軽は色々とテンションあがってて、そんな違和感には気づかなかった。それから二人はチャイムが鳴るまで対策を話し合って、授業に戻っていく。
それから野乃野足軽はチラチラとめっちゃ隣の席の平賀式部を見てた。時々目があったりして、その度に平賀式部はニコッと笑顔をくれる。前なら、もしも目があったりしたら気まずい空気が流れたはずだ。意識してむしろ見ないようにしてた。
なぜなら、好奇の目を向けられるのを平賀式部は嫌ってると思ったからだ。それで好感度を野乃野足軽は下げたくなかった。だからなるべく見ないように気にしないようにしてた。でも今はどうだろうか? 野々野足軽には大義名分がある。一回の授業で何回も目が合う。
それはきっと平賀式部もちゃんと見てくれてるのか……それを確認してるんだろう。だから野乃野足軽も堂々と「見てるよ」と視線で返す。野乃野足軽は眼福だと思ってたし、約得なのに感謝してた。
そして平賀式部も実はずっとニマニマとしてた。勿論顔には出さない。けど、授業の内容が出てるタブレットには高速で色々はやばい感情が書き込まれてた。