「むむむ……」
野々野足軽はそううなりながら、桶狭間忠国のスマホを握ってる。今は放課後で学校の人気のない場所で今は二人っきりだ。いつもなら野々野足軽は放課後は平賀式部とラブラブできる大切な時間だ。けど、今日は習い事があるらしかった。なので彼女は先に帰ってしまった。そうなるとさっさと帰って力の訓練でもするか――となる野々野足軽だが、そこで桶狭間忠国に捕まった。いや奴はきっとタイミングを計ってた。なにせずっとつかず離れずをキープしてたからだ。
それを野々野足軽はわかってる。というか、あの日……野々野足軽と桶狭間忠国の関係性が変わった翌日から、実際いつだって桶狭間忠国はそばにいた。そばにいたというと、まるで野々野足軽が許してるみたいだが、そうではない。
それにそばにいたというのもわかる範囲にいるわけじゃない。ただ向こうがの野々野足軽を認識できる範囲にいるって感じだ。なるべく邪魔にならないように、認識されないように……そうしてた。
けど散々言ってきたように桶狭間忠国はでかくて筋骨隆々だ。なのに地味な感じになるようにしてる。でもそのアンバランス差によって、逆に目立ってる。なので実際、誰もが気づいてただろう。けど周囲はきっと、野々野足軽が狙われてる――と思っただろう。なにせ野々野足軽が平賀式部と付き合ってるのは何かの間違いだと誰もが思ってる。
そしていきなり桶狭間忠国が野々野足軽に付きまとうようになったとなれば、その狙いは平賀式部をめぐってのなにか……と周囲は思う。いずれは桶狭間忠国に野々野足軽がぼっこぼこにされるだろうって周囲は思ってる。
そしてそれを期待してる奴らだっている。けど事実は全く違う。誰もいなくなったことを確認して、放課後の玄関で上履きから外履きへと変えようとしてる野々野足軽に桶狭間忠国は接触してきた。
「お待たせしました」
――とかいう謎の言葉と共にだ。
「なにが?」
と返した野々野足軽は何も間違ってなかっただろう。そしてその答えとして、桶狭間忠国はこういった。
「主の為の組織です」
そういって、桶狭間忠国はライングループを見せてきた。その団体名は「秘密結社」だった。いやいやなんの? と野々野足軽はおもった。普通だって「秘密結社 ○○」ではないだろうか? でもそんなことよりももっと根本的な問題がある。
「これは……」
「主の為の組織です」
「いや、なんで?」
なんかグループを見ると、50人くらい入ってる。そして何やらいろいろな情報を発信してる。どこどこで落とし物を見つけた。とか迷子の人を助けたとか……空き缶をこれだけ集めました! とか、なんかボランティア活動的なことをやってるらしい。
でも野々野足軽は意味が分からない。別にボランティア活動をしたいのなら、勝手にやっててくれればいい。けど、それが野々野足軽と何の関係があるというのだろうか?
「組織って……そんなの求めてないけど?」
「主は私たち人間とは違います。その思考、その理念。きっと崇高なものがあるのでしょう。なら、それを実行するためには我々矮小な存在は数が必要だと思ったのです!! 任せてください。今はまだ二桁ですが、その内世界は全て、主の元のひれ伏すでしょう!!」
なんか桶狭間忠国が熱弁してた。それを頭クラッとしつつなんとか最後まで聞いてた野々野足軽。その熱弁をきいて、とりあえず野々野足軽はいうよ。
「そんなの求めてない」
そしてそのまま、「解散」をライングループにも告げる。けど……なんかそれを拒否する返信やら、そんなことはいやだという懇願するラインが帰ってきて、冒頭に戻る。
(いやいや、なんで? どうしてだよ?)