再び力を薄く広げて学校の敷地全てをカバーするくらいに広げていく。その時に山田奏とか見つけたが、今は関係ないから野々野足軽はスルーをす−−
「なんで?」
−−思わず野々野足軽の口からそんな言葉が出る。なぜならば……山田奏の側にいたからだ。誰が? なんて言わなくてもわかるだろう。そう、桶狭間忠国が……だ。懸念が野々野足軽には湧き上がる。なにせ二人は野々野足軽と平賀式部にそれぞれ関わりがある。
でも二人はそもそも知り合いでもなんでもなかったはずだ。二人の関係性はそれこそ友達の友達である。桶狭間忠国にとって、山田奏は野々野足軽の友達……という認識であるしかないだろうし、山田奏にとっても桶狭間忠国は野々野足軽と同学年……くらいの認識のはずだ。
勿論学校という狭い場所でなら、いつだって知り合いになる−−という可能性はある。おかしいことなんて全くないだろう。でもこの様子を知り得た野々野足軽はなんか−−
(いやな予感がする)
−−と感じた。流石に薄く広げた力では一体二人が何をして、何を話してるのか……なんてことまではわからない。二人が一緒にいるとわかるのも、二人の生命力を記憶してるからだ。だから輪郭だけでも、二人だというのがわかる。けど逆をいうとそれだけの情報量しか野々野足軽は得られない。
「どうしたの?」
そんな風にいう平賀式部。ちょっと腕の制服を引っ張って、野々野足軽を見上げてくる彼女。今は休み時間だ。しかも三時間目と四時間目の間の一番お腹が減る時間帯だ。あと一つ授業が終われば弁当の時間。そんなわけで、なかなか教室から出るのも億劫だな……と野々野足軽は思う。
それに……だ。
「ほら、足軽君、ちょっとでもやろ」
そんな風にいう平賀式部。「やろ」という言葉に教室の男女が関係なくガタッと反応するが、別に二人はこんな昼間からやらしいことをするわけはない。それにここは教室だ。教室でやること……一体それはなんなのか? そんなのは考えるまでもない。
「それじゃあ、第一問」