聖剣の刀身が輝く。それもただ輝いてるだけじゃない。なんて言ったらいいのだろうか? 聖剣なんだから、輝くくらいするだろうって思うだろう。実際、その通りだ。聖剣だから人々を魅了するような輝きを放つなんてのはお手のものだ。
それだけじゃない。聖剣の輝きは勇気を沸き立たせたりする。絶望に光を差し込ませたり、小さな希望を何倍にも感じさせるような……そんな効果があるらしい。
何回も見てきて、そしてその度に勇気をもらった。困難を打ち払って来た光だ。けど、なんか様子が違う。今回の光……それはいつもよりも神々しい。それに……なんか光から手が出てる。
白くか細い女性の手だ。それだけ聞いたら不気味かもしれない。なにせ光ってる剣から手が出てるのである。本当にそれだけ聞くとホラーと変わらない。けど違う。これはホラーじゃない。
なぜかというと、恐ろしいとか、怖いとか……そんな感情は沸き起こらない。そういう存在。曖昧な魂だけの存在というのは、元の世界にもいた。死した肉体から離れた魂。それらは恐ろしいと、そういう風に生者に思わせる性質がある。多分だが、生と死の関係性がそれを沸き起こすんだと思う。生者は死者を見て、根源的な恐怖を沸き、そして死者は生者の光を忌々しく思ってる。
だから生と死は相反する絶対的なものだ。この聖剣から出てる腕……それはエネルギーでしかない。肉体なんてものはない。あるとすればそれはこの聖剣。腕は最初は指先しか見えてなかった。爪だね。そこから指かいくつか生えてきて、さらには手のひらも見えてる。そして今はその手首から関節部分までって感じだ。
力を注いでいくと、それに応じて体が構成されてる……そんな感じがある。ならこの力をさらに高めていくと、聖剣が人の姿として顕現する? そんなことが起こり得る……ということだろうか?
それは楽しみだが……
「くっ……これ以上は……」
力を注いで、そして光を放つそのエネルギーをさらに高密度化していくということはとても難しい。なにせそれは、言うなれば容量が決まってるバケツに無理やり水をこぼれないように注いでるようなもの。水を圧縮して圧縮して圧縮してるのだ。本当にそんなことができるのか? はよくわからない。けどイメージとしてはそうなのだ。元の堆積? 容積は決まってる。それに無理矢理詰め込むってことを今してる。もしかしたらだけど、限界はとうに超えてるのかもしれない。
下手をしたら容器ごと……それこそ聖剣ごと壊れる可能性だってあるだろう。でもそれを乗り越えてさらに限界のエネルギーを圧縮できるかどうか……ってのが自分の力にかかってる。力というかもうこれは技術と言って差し支えないだろう。
勇者の自分なら……そう思いたいけど……
「ぐ、うああああああ!!」
これ以上の圧縮は無理だと自分は判断した。それでも、これまでで一番の力の凝縮だったのは間違いない。なんとか膝を立てて起きあがろうとしてる黄金の鬼。そこに向かって、自分はエネルギーを蓄えて眩い光を放つ聖剣で切り掛かった。