uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 376

(力の総量だけで言えば……負けてるな)
 
 ここに来てそんな存在を初めて見た。自分自身の力の総量はジゼロワン殿の眷属になったことで圧倒的に増えた。体が変わり、存在が変わり、だが勇者という存在証明は変わらずに、むしろ勇者としてこれでもっとやれるだろう――的になんかめっちゃ増えた。
 
 聖剣も自分自身の中に取込まれて、いつだって引き出せるようになってるし……色々と便利になった。ある意味でこれでジゼロワン殿や同じような存在になった魔王がいなかったら、自分はどう思っていただろうか?
 多分だけど、おごっていただろう。それだけの力がある。今はそれを謙遜して言えるが、一人でこの力を手に入れてたら、確実におごっていたと思えるほどの力だ。
 世界を超えても、それは強大と言える力。でもどうやらあの蛇の集合体のような超巨大な隕石は自分よりもエネルギーの総量的には多いらしい。
 
 その力を直接ぶつけられてるから、石化の中和だけで不利になってく。今までは大抵はこっちの方が力が強大だったから、真正面からのやり合いならこっちに分があったわけだ。正面から力をぶつけ合ったら、力が強大な方が押し切れるからな。
 でも今はそうじゃない。単純な力の総量ではこっちが負けてる。このままただ視界に入ってるだけでも向こうの石化の呪いを中和するだけでこっちの力も削られてるんだ。
 向こうも力は減ってるだろうが、こっちがこのままではエネルギーがつきる。奴の視界外に逃れれば……とも思うが、なにせ巨大だ。そしてここは何もない……星と暗い空間だけ。刻んだ先の隕石達も彼方へと行ってる。
 
 つまりは、自分を倒す場所をちゃんと整えてると言うことだろう。向こうも多分石化の呪いで自分を落とせるとは思ってない。けど、その無数の瞳でにらむだけでこっちのエネルギーをゴリゴリと削れるのだから、やらない手はなくて、そして本命は圧倒的質量による粉砕だろう。
 
「結構ピンチかもな……」
 
 そんなつぶやきが出る。あらかじめ力を高めようとすると、更に石化の呪いが強くなる。そうなるとこっちのエネルギーの消費がかさむ。派手に準備をすることは出来ない。
 今の段階でわかるのは、どうやら向こうは石化の呪いをこっちの妨害に特化して使ってる……ということだ。これで決めるつもりはないが、こっちのエネルギーの高まりに合わせてその呪いを強め、こっちの力の高まりを阻害する……みたいな。
 そんな嫌らしいことをやってきてる。
 
「はーふー」
 
 自分は高まってた力をどんどんと押しやるように内部へと押し込んでいく。それによって自身の光で照らされていた周囲も暗くなって、あるのはただ超巨大な隕石にうごめいてる無数の蛇の瞳の光だけになった。
 
(ちょっ!? どうしたっす!?)
 
 ノアがそんなことを発してるが、ここは察してほしい。向こうが石化の呪いを妨害特化に使ってるのなら、なるべく力を押し込んで、石化の呪いへの力を押さえてるんだ。そして聖剣が届く範囲に来たら、一気に勝負をかける。
 ゼロを百に……いや千に万に持って行く出力を考えとけ。きっとそうじゃないと、一瞬で押し巻けるだろう。
 
 視界いっぱいが隕石……というか蛇で埋まる。一匹一匹がどうやらめっちゃデカい蛇だったみたいだ。自分をまるごと飲み込むことくらい簡単そうたが、奴らの役目はあくまでも石化の呪いなんだろう。なにかをしてこようとする気配はない。
 
 ただまっすぐに迫る巨大な隕石。自分はギリギリまで待って、本当の聖剣の刀身が触れる直前でたがを外した。