「ほら、これも見て」
そう言ってそうそうちゃんは他にも人影が映ってる動画を野々野小頭に見せてくる。どうやらそこそこあるらしい。たまたま映り込んでるってのがほとんどだが、最近は狙ってる人達もいるらしい。オカルト界隈では今、この街は結構熱いということだ。
「いろんなオカルトマニアが集まってるからね。そのうちきっと決定的なものが取れるよ。なにせ今の時代、誰もがカメラを持ち歩いてるようなものだからね。隠れ続ける……なんて不可能だよ」
「確かに……」
それはそうかも……と野々野小頭は思う。
「でも、そのオカルト界隈の人達がそんなに騒ぐことなの? だって今でもそれなりに不思議なことって各地であるものじゃない?」
都市伝説ってやつはどんな時代になっても、形を変えて広まったりしてる。そもそも広がり方ならネットが普及した今こそ早く広く広まったりしてるだろう。ネットにはきっと日々、新たな都市伝説が投稿されたりしてるはず。
「それはそうだけど、ここまでリアルで起きてることってそんなにないよ。それに実体験をした人もいるからね」
「実体験?」
そう言って更に見せてきたパソコンの画面。そこには十字傷が顔にある、とても怖い男の写真があった。このまま指名手配されててもおかしくない……と野々野小頭は思った。
「この人?」
「見た目からやばいヤツだけど、実際相当ヤバいヤツだったのよ」
「そんなヤバい人になにかあったってこと?」
「こうなった」
「なんか変わったね」
思わず野々野小頭もそう言うしかない。だって最初に見せられた写真はそれこそ反社会的と言った感じだった。けどなんか次に見せられた写真は公園で年老いた犬と一緒にベンチに座ってお茶を飲んでた。老人か? と言いたいくらいだが、それくらいなんかほのぼのとしてて、最初にみた写真の覇気が全くない。
「同一人物なんだよね?」
「そうよ」
「てもこれがなにか? 心境の変化だけならこの街で起こってる不思議と関連なくない?」
野々野小頭の言うことはご尤もな指摘だろうけど、それをそうそうちゃんは否定する。
「こいつは本当に札付きの……それこそ魂まで腐ってるようなやつだったんだよ!!」
「ひどっ」
他人の女子中学生にそこまで核心めいて言われるなんて、この人も心外ではないだろうか? とか野々野小頭は思った。
「小頭ちゃんは知らないだろうけど、本当にそんなやつだったんだよ。けど変わった。彼を知ってる人こそ言ってるわ。『あいつが変わるなんて、しんじられない。オカルト的なことでもない限り』ってね。それに実際、人が変わったかのようになってるのよ。これは相当怪しい」
「どういう事?」
「ここまでいきなり人が変わるかしら?」
「それはなんとも言えないんじゃない?」
「ううん、人なんてそんな簡単に変わる訳無いんだよ」
そう核心めいてそうそうちゃんはいう。まるで人生でそれを感じてきたように。でも彼女はまだ中学生である。
「私思うの」
「何を?」
するとそうそうちゃんは野々野小頭の耳に顔を寄せてきて、コショコショとこういった。パソコンのファンが静かに唸ってる。
「あれってきっと別人なんだよ」
ってね。