「別人? 漫画の読みすぎでしょ」
「だってだって、この人を知ってる人ほど、そう言ってる。それにおかしくなってるのはこの人だけじゃない」
そう言ってそうそうちゃんは野々野小頭に別の人物が映った画像を見せてきた。
「この人達……確かHRで先生が言ってた……」
野々野小頭はその写真に見覚えがあった。だってそのまま学校で使われてた写真だ。写真には二人の男が写ってる。赤髪の男と金髪の男。どっちもやんちゃそうな見た目してるけど、教師が言ってたのはそんなやわっちい注意ではない。
写真の彼らは何かを持ってる。それは首輪である。いや、厳密には違う。首輪の先のリードを持ってる。じゃあ首輪はどこにあるのか? それはもちろん二人の首についてる。
学校で知らされた注意はこうである。
「最近『私の飼い主になってください』という変質者が現れてます。みなさん、気をつけてください」
である。はっきり言ってなんで逮捕されてないのか謎だ――と野々野小頭は思ってた。でもそれだけをいうだけではどうやら国家権力もしょっ引くなんてできないみたいだ。
「この二人も札付きの悪だよ。それこそさっきの奴と同じで世界の全ては敵で、誰彼構わず喧嘩したり、盗みしたり……そんな奴ら。他人に飼われたいなんて変態性なんてなかった。
それがいきなりこれだよ? おかしいよ」
「それは確かに……心配だね」
主に頭が――と野々野小頭は思った。色々と興奮してたせいか、そうそうちゃんは一度飲み物を喉に流し込む。そしてこういった。
「こんな短期間にヤバい奴らが三人も人が変わったようになった――そんなことある? 別人にすり替わってたって言う方が信憑性ない?」
「うーん」
野々野小頭は考える。どっちが現実的か? となったらどっちも現実的ではないような気がしてる。実際、この写真の人達は変わってしまってるのは事実である。
何もなくて、人が変わる……なんてのはないだろう。それこそ彼らは、時々不良がちょっとした善良な事をする――なんてレベルではない。実際、人が変わったようになってしまってるということだ。
そしてこの街では不可思議な事を起こしてそうな謎の存在が目撃されてる。こうなったら、この変化にそれを関連付けるのはしかたないのかもしれない。
それこそ説明なんてできないから、不可思議な超常へと話が持っていきやすい。
「てか、この人達が本当にまとも? になってるのなら、この人達になにがあったか聞くのがいいんじゃない?」
野々野小頭は至極真っ当な事をいってみた。札付きの悪――だったらしいが、そうそうちゃんの調べでは変わってるらしい。なら、話くらいできそうではある。
「え? 怖くない?」
「……」
なんで不思議なことには突っ込んでいけるのに、リアルに居る人間にはその行動力が示せないのか謎だと野々野小頭は思った。