「えっと、ホームレスとかではない?」
「もちろん」
「私たちを襲う気も……」
「あるわけないだろ」
「ち、ちなみに君たちは高校生? 中学生?」
「つうほ……」
「ミカン氏! ちょっとこいつの口をふさいでてくれ!」
ミカン氏が余計なことを言ったせいで、野々野小頭と草陰草案は再び警戒を強めてしまった。か弱い少女二人が四人集まってる大人を警戒するのは普通の事だが……これ以上警戒されたら、ほんとうに不審者として通報されそうだと、三人は焦る。そう三人は。
どうやらミカン氏は……そう、そうとても楽しそうである。どうやらかなり彼の琴線に二人の少女は触れてるらしい。いつだってアニメの少女……それこそ2次元にしか興味ないと宣言してた筈の彼だが、この二人の少女はなぜかオーケーらしい。もちろんそれは二人の少女にとっては全然OKな事ではないだろう。寧ろNGだと思える。
まあだからこそ、残りの三人はこれ以上彼女たちに警戒されないように、ミカン氏を取り押さえて、彼女たちから引きはがした。
「なっ何を!? やめてください!!」
そんなことを叫んでるが猩々坊主がミカン氏を離すことはない。ミカン氏は中肉中背だが、案外と運動ができるタイプではあるみたいだ。でも猩々坊主はそれよりも鍛えてるような肉体をしてる。それこそ見た目的にはがっちりとしてるのだ。
そんな猩々坊主の拘束からミカン氏が脱出できるわけはない。だが彼は抵抗する。
「別に、何もしませんよ! 私は少女に無暗に触ったりしません! イエス・ロリータ・ノー・タッチ――ですよ!!」
とりあえず堕としてたほうがいいと判断したのか、猩々坊主がミカン氏の首に腕を回した。そしてしばらくすると、力が抜けたようにガクッと彼の体から力が抜けた。
「悪は去ったぞ」
「その人だけですか?」
散々ないわれ様なミカン氏であった。それに結局の所、野々野小頭も草陰草案も残ってる三人にも安心してるわけじゃない。
「こんなところで一体何をしてたって……あっ! まさか!!」
野々野小頭の背後に隠れてた草陰草案は何やら思いついたらしい。そして三人の容姿をじっくりと見る。
「変・変・変……坊主……」
そういって一人ずつを指さしていく草陰草案。それがどれだけ失礼な事か彼女はわかってない。指さされたおっさんたちは皆青筋ピクピクと……と思ったが、逆にほっとしてる。なぜか? それは『変』の後に『体』がつかなかったことで安心してるようだった。実際は十分に『変』と呼ばれることもやばいと思うが……彼らは違うらしい。ヘンタイは嫌だけど変だけならまだいいみたいなね。
「もしかして、あなた達も、この場所の調査に?」
その草陰草案の言葉に三人は急いで同意した。それだけで草陰草案が自分たちと同類だと気づいたのだ。そして三人はこれまでやってきたことと自分たちがいかにオカルトマニアなのかを話して、ようやく納得してもらった。
「なるほど、それならここいるのも納得します。それでどうでしたか? 何か不思議なことありませした?」
ようやくホームレスでもヘンタイでもないとわかってくれた草陰草案はむしろ同類ということで気さくになってた。せっかくだから先にここにいた人に話を聞きたいとも思ってるんだろう。そこで三人はちょっとひきつる。そして三人は大人目線で素早く視線を交差させた。
どういうことかというと……
(おい、どうする?)
(あの出来事は彼女たちには……)
(ああ、危険に巻き込むわけには……)
――とかいうやり取りを……視線で出来る訳もなく、三人はなんとなく通じ合ってると思ってるだけである。普通の人間が視線を交わしただけで思いをくみ取れる? そんなわけはない。