「う……ううん……小頭ちゃん……」
泣いてる野々野小頭に反応したのか、草陰草案が目を覚ました。彼女を見て、そして周囲を見回す。
「えっと……私……やっちゃった?」
「やっちゃいすぎだから! いっぱい叱られればいい……」
「今回は……ちゃんと反省してるんだけどな。一緒に謝ってくれる?」
「バカ……今回だけだからね」
「うん……」
そんなやり取りを二人はしてる。野々野足軽は確かめてたとはいえ、一応しっかりと草陰草案を見てる。それでやっぱり身体的には異常はなさそうだった。それに草陰草案は最初は寝ぼけてた感じだったが、次第にちゃんとやり取りもハッキリとしつつある。本当に不幸中の幸いで彼女は助かったらしい。
「よかったよかったですな……グスグス」
「とにかく無事に見つかったことだし、関係者には連絡をしたほうがいいかもしれないな」
「そうですね。歩くのも辛いだろう?」
そう言って皆が草陰草案を心配する。それに対して草陰草案も「すみません」といった。自分のために再びこんな所まで来てくれたって事に感謝してるんだろう。
「えっと……その……」
「どうしたの? 痛い所ある?」
「その……」
何やら言いよどむ草陰草案。それに対して皆が心配そうな顔をする。なにせ状況が状況だったからな。すると――
グゥゥゥ
――となんか気の抜けるような音がこの廃墟に響いた。そして真っ赤になる草陰草案。どうやら今のは草陰草案の腹の音だったらしい。でもそれはそうだろ。なにせ少なくとも丸一日はそれこそ何も食べてないし、飲んでない筈だ。胃の中も空っぽになるだろう。
「こ、これを!」
誰も飲み物も食べ物も持ってないと思ってたら、ミカン氏がそのリュックからペントボトルの水を取り出した。しかも新品だ。飲みかけ……とかではなかった。どうやら事前に用意してくれてたらしい。
配慮もしてペットボトルの蓋をキュッと軽く開けて渡してくれるミカン氏。そして野々野小頭が草陰草案の頭を支えてその口に先端をあてがう。
コクコク
――と彼女の喉がなる。更に色々と買ってたのか、ミカン氏が栄養価の高そうでかつ食べやすそうな食べ物を取り出してた。用意がいい人である。そんな中、ちょょっとした安心感に満たされてたとき、『みゃーお』という音が聞こえて、皆に緊張の糸が走った。