「お前にだけは? 俺だから言えるんだが?」
「は? あんた頭おかしいんじゃないか?」
本当にこのまま喧嘩がおっぱじまってしまいそうな雰囲気。なにせ、仮面の男はあんな仮面をしてるのに、そこに何も卑屈な心なんて一遍もない。ただただ自信……それがあふれて来てる。実際あの人が強いのかとかは野々野足軽はしらない。別段ムキムキ……ってわけでもないが、だからってヒョロヒョロな見た目でもない。そこそこ背もある。
だから人並くらいには普通に喧嘩とかできそうではある。でも相手は三人……普通ならその時点で『分が悪い』と思うだろう。なにせ……だ。数の差ってのはいくら身体能力が高い人でもそれだけで勝率はガクッと下がるからだ。マンガやらアニメとかに影響を受けた人たちは勘違いしがちだが、一人の人が倒せるのなんてせいぜいが多く見積もって五人とかだろう。
それだって一般人対プロでだ。格闘家とか、ボクサーとかそういう人達が相手をしたとしても、十人二十人を一人で倒せるなんてそんなのは創作の中だけの話。リアルでは五人も倒せたら凄いって感じ。だから一般人ならそれこそ二人倒せたら凄いし、三人なんて一人で倒せたら大金星だ。
だから三人に絡まれてる時点でめっちゃピンチなんだが……仮面の男にはやっぱり自信しかない。
「頭がおかしい? ははっそれは違う。俺は今、めっちゃ気分がいいんだよ」
「は?」
この状況で? という感じの「は?」だった。自分の状況を全く理解できてないような発言だったからだろう。すると、仮面の男は鏡を取り出した。そして自分の顔を映してる感じで色々な角度から自分の顔を見だした。当然だが、周囲は「なにやってんだ?」って感じだ。
なにせ……だ。なにせそいつは変な仮面をかぶってる。顔なんて見れるわけない。鏡に映るのは勿論だけどその変な仮面――でしかないはずだ。でも……それなのにその男は「はぁぁぁ」となんか恍惚な息をはく。
「いいと思わないか?」
「は?」
「いや、ほらさ、俺の顔。めっちゃいいだろ?」
(((やべぇ奴だこいつ)))
男に絡んでる三人は間違いなくそう思っただろう。だってそいつが見てるのは仮面だ。第三者視点からなら。でもそいつはそれをもって自分の顔が良い……といってる。三人からしたら……いや他の客からしてもそれはどう考えても異常。つまりは目の前の奴はやばい奴だということだ。
そしてなんと……
「はい、本当に素晴らしいです。そのフォルムといい、形と良い、パーツも完璧ですね」
「「「ええええ!?」」」
絡んだ三人はその美人な女性にもびっくりした。だって、明らかに変な事を仮面の奴はいってる。普通はこんな奴には近寄ったりしたくないだろう。けど、女性はニコニコしてる。
「あ、あんた達お似合いだよ……いくぞ!」
そういってチンピラ達とんでもない奴らに絡んでしまった――みたいな感じでさっていく。そんな様子を傍から見てて野々野足軽は思った。
(うーん、これってどうしたらいいんだ?)