「私はお前の親父の愛人なんかじゃない。それを訂正しろ」
馬乗りにされてるのに、そう言ってきつく睨んでくる女。どうやら相当親父の愛人扱いしたのが気に入らない様子だ。実際この女はとてもプライドが高いと見える。
それに強い。これだけ若くて強いのなら、別に親父じゃなくてもよってくる男は沢山いそうではある。まあちょっと筋肉質でデカいが……それにお世辞にも美人ってわけでもない。
健康的というのがまっさきにくるような……それこそ俺がこれまで侍らせてきた女は自分をどう良く見せるか……そればかりを考えてた様に思う。
そうやってどれだけいい男を捕まえるか……それを女は狙ってるんだ。なにせこんな世界だ。女だって戦えると言ってもそれはやっぱり男ほどに戦えるわけじゃない。
それに大抵の女は戦うことよりももっと別の生き方を選ぶ。それこそいい男を捕まえて家庭に入る――ってことだ。それが一番この世界で女が生きるのに楽な生き方である。それに増やすことも女にしか出来ない仕事でもある。
だからこそ、女は着飾るし、露出を高くする。確かに暑いのもあるが、女はわかってる。男が女をどういう風に見てるのかって事。だからこそエロい格好になるわけだ。
でもどうやらこの女はそこらへんもっと違う……そう本当に機能性とかで服を選んでるみたいだ。けどこれはこれで新鮮ではある。それに綺麗ではないが、この女はブサイクでもない。ちゃんと化粧とかしたら化けそうではある。
女遊びをしてきたやつほど、こんな女を自分好みに染めたい……そんな風に思ってもおかしくない。それを考えると、親父が狙ってたとしても全然おかしくないと思える。
なにせ親父には何人も愛人がいる。けどそれはこの世界でそこそこ裕福なら当たり前。母親もそれを了承してる。だからこそこの女が親父の女だったとしてもおかしくない……と思ったけどこの女反応を見る限り、違うようだ。それに親父も女好きだが、親父は面倒な女は嫌いな男だ。男に従順な女が好きだった筈。
まあ趣味が変わった……ということもあり得るが。
「でもアンタはこんな怪しい仕事を引き受けてる……それっておかしいだろ? アンタは強い。それは知ってる。なら変な仕事をやる必要なんてないだろ?」
そうなのだ。それがおかしい。この女は強い。それは肌で感じてる。強ければ、仕事には困らないはずだ。それに今は特需といってもいい。なにせ武器は新しいのがでてきて、それを使えば砂獣をスパスパと切れる。
これまでの苦労が嘘のようだろう。稼ぎ放題といっていい。なのに、こんな危険で自分の立場を危うくするような事……まとも奴ほど受けるわけなんてない。
それなのにそんな仕事を受けるなんて、かなりの事情があるか、親父に弱みを握られてるか……それ以外ならもう愛人だから……とかしかないじゃないか。
俺の言葉に女は顔をそらす。そしてこういった。
「それは……」
「それは?」
「それはお前を合法的にボッコボコに出来ると言われたからだ。前々から、貴様を殴りたかったんだ」
「はあ!?」
何だこの女。クソッタレじゃないか。