「はあはあ……うそ……だろ」
穴から出した手……いや、そこに手はなかった……と言うのが正しい。そう、野々野足軽の手は手首から二の腕の半分から先がなかったピューピューと血が吹き出てる……なんて事はないが、どくどくと赤い血が流れてて、そして白い骨が見えてる。
「あぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!」
状況を理解すると、頭が一気に痛みを伝えてきた。それにパニックになってるせいだろう。力を上手く使えなくて、野々野足軽は空から落ちだした。かなりの高さがあったけど、このまま自然落下していくと数秒後には野々野足軽は潰れたトマトみたいになるだろう。それを防いでくれたのは風の子だった。
『どうしたの? 大丈夫?』
そんな風にいってくれてる。けど流石に手がなくなった痛みでそれどころではない野々野足軽だ。
「いたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたい――」
というしかない。それを見た風の子は「ちょっとまって」といってその体を重ねてくれる。そして大部分が傷口に集まる。すると痛みが緩和されたのか、野々野足軽の呼吸が正常に戻る。今、野々野足軽を支えてくれてるのも風の子だし、風の子様々だ風の子が居なかったら野々野足軽は死んでた。
「くっ……」
野々野足軽はなんとかおちつきを取り戻して力を手に集める。そして草陰草案でやったことを思い出して、力を回復……いや、この場合は再生か? によらせていく。すると、傷口がグジュグジュと活性化していって、血に塗れた手が生えてきた。
「くっ……」
まだ上手く動かせないが、これはきっと再生直後だからだろうと野々野足軽は割り切った。それに再生したけど、再生した手からも痛みはある。流石に手がなくなる痛みとは比べ物にならないが……まだしばらくは痛みから開放されることはなさそうだ。
「ありがとう、助かったよ」
野々野足軽は風の子にお礼を伝える。そして自身の力で再び飛んだ。
『ううん、いいよ! けど、どうしよっか……』
そういって風の子は上をみる。いや、上じゃない。穴だ。実際、野々野足軽はもう帰りたい気持ちでいっぱいだ。なにせドラゴンなんて意味がわからない物がでてきてそいつに手を食われたのだ。興味よりも既に恐怖が勝ってる。
「とりあえず今日はこの辺で、あの穴の事は後々考え――」
――ドン!! ――
「――なんだ?」
そんな音なのか振動なのか……よくわからない何かが響く。それは野々野足軽たちがいるここにだけってわけじゃない。なんか空が……いや空間が揺れてるような……そんな……そんな感じだ。
そしてそれは世界に波紋のように広がっていく。