「ははっははははは!」
なんかいきなり背中の彼女が笑い出す。それも豪快にだ。そのまま俺を踏んで立ち上がる。かばってやってたのに、なんという仕打ちだろうか。
「おい、なにすんだ!」
「ありがとうございます」
「おい」
なんかめっちゃ無視されてる。まるで見えてないような……いや、見えてはいるな。なにせゴミを見るような目を送られてるからだ。一体何なんだ? 心配したのがダメだったというのか? この戦いの前まではなかなか良好な関係になってたと思ってたのに……こんな目はそれこそ以前にこいつに毎回絡んでたような……その時のうざがられてる時の目だ。
「私が治します。砂獣を倒して倒して倒して、倒しまくってください」
「はい!」
いい返事をして彼女は走り出す。まずは武器を回収して、ほかの奴が相手してた砂獣の脇から切り付けて真っ二つしてた。そんなに戦いたいのか? 確かにこの戦いは俺たちの未来を決める戦いだ。勝ち取るか、負けて死ぬか……その戦い。だから戦わないといけないのはわかる。でも俺たちがそのすう勢を決めるわけじゃない。
カギになるのはそれこそ勇者とかああいうやつらだろう。俺たちはいくら戦っても自分たちで終わらせることが出来るわけじゃない。誰かを信じて戦い続けないのといけないのか? それをどんな傷を負っても? そんなの……きついだろ。
「あなたは戦わないんですか?」
聖女・ミレナパウスがそんな事をいってくる。なんかここで「はい」と言ったら下がらせてくれそうな……そんな気がする。俺では彼女の代わりにはならないが、彼女は俺なんかの何十人分の働きをしてくれる……と聖女・ミレナパウスはわかってるのかもしれない。だからもう俺はいらない……
「くっ」
俺は走った。前にだ。後ろじゃない。そして剣を……剣を……でもここで止まったら格好悪いだろう! というわけで俺は砂獣に殴りかかった。もうやけくそだった。
「うおおおらああああああああああああああああああああああ!!」
ドガン!! ――となんか砂獣の側面が盛大にへこんで吹っ飛んでいく。そしてその方向にいた別の砂獣も巻き込んでもみくちゃになった。
「は?」
どういうことだ? あれは強化された砂獣だ。なのにただの拳でその甲殻がへこんだ? 俺の拳、どうなってんだ? と思った。