地面に着地した俺はミレナパウスの背後から迫る砂獣がみえた。武器は……さっきのデカいやつに使ってなくなってしまった。手の届く範囲にはない。けど迷ってる時間はない。ミレナパウスは気づいてない。俺は拳を強く握った。
「うおらあああ!!」
踏み込んでの一撃。まずは正面から、そして更に下から突き上げる様に入れてさらに連打。そして最後に砂を蹴って足蹴にして吹き飛ばす。倒せなくてもこれで時間は稼げるだろう。その間にどっかに刺さってる武器を見つけて取る!! それで止めを――
チュドーン!!
――はい? 追い打ちを掛けようとしたら、後ろから光が走った。そして俺が蹴り飛ばした砂獣に穴が空いて動かなくなる。
「さあ、早く武器を取りなさい。休んでる暇なんてないわよ」
そういってミレナパウスはチュドーンチュドーンとそこらの砂獣に向かって光を放ちまくってる。あれずるいよな? なにせ近づく必要なんてないし、武器も必要ない。ただ手を向けたら必殺の攻撃が出るのである。あれにはなんか蟻の砂獣だけじゃなく、それこそもっとデカい砂獣だっで一撃で殺されてる。もうあいつ一人で良いんじゃ……とかいう考えが浮かんでくる。
けどそれを首を振って振り払った。
(いくらあの攻撃が強いとしても、一緒に俺たちを回復し続けてるんだ、楽なわけない。せめて少しでも負担を減らさないと……)
チュドーン――(減らさないと……)チュドーン――(減らさ……)チュドーン!! チュドーン!! チュドーン!!
(へら……す必要ないかもしれないな)
なんか自分の考えは甘いのかもしれないと思えてくるな。あれを見てると。だってなにせ圧倒的なんだ。聖女・ミレナパウスは圧倒的な存在感を放ってそこにいる。なんか絶対的な強者感が見えてきた。それだけ、頼もしすぎる。俺たちのような男に比べたら背も低くて華奢なのは間違いない。腕も脚も細いし、体の厚みだってそうだ……けど彼女は俺よりも強いだろう。間違いない。
魔法はなんて理不尽な力なんだと思う。もしかして全然疲弊なんてしてない? そんなことあるか? あれだけの事をしておいて、らくらくなんて……そんなはずが……けど俺が見てる彼女からは疲労の色なんてのは見えない。むしろ涼しい顔してる。いや美しい……
「ほら、もう治ってますよ? 寝てる場合じゃないですよね?」
そんな事をいって彼女はやられてた仲間を治療して立たせてた。結構無理矢理。まさに俺に逃げるな……と言った時のような圧があった気がする。けど直された仲間は泣いて喜んで、更に砂獣に向かっていった。きっと流石にこれは……とおもう傷だったんだろう。でもそれでも聖女・ミレナパウスは問答無用出直した。そしてそれからも問題なく砂獣を屠ってる。
マジで彼女の底が見えない。同じ人間……なのか? と思わず彼女の方に恐怖を感じるくらいだ。まあ仲間なのは確実だから、恐怖も感じるが、それ以上に頼もしくもある。結局、俺のようなイチ雑兵が聖女なんて大層な人に出来ることなんてないんだろう。俺もただ、戦場をかける一人の兵士となっでただただ砂獣を屠り続ける役目を全うしよう……そう思った。