「かはっ――」
でもきっとアンゴラ氏が動けるなんて思ってなかったんだろう。けどそれも仕方ないだろう。なにせ一度は尻餅ついて怯えてたのだ。そんな相手がいきなりいい動きをする……なんて思えないだろう。
まさか、このための布石だっだ? いや、そんな事はないだろう。アンゴラ氏は確実にちょっと前はおびえてた。あれが演技な訳はないだろう。きっと今は、それこそ世間でいうところの覚悟が決まった……という状態なんだろう手。腹を決めたといってもいい。
そして今のアンゴラ氏はその感覚を研ぎ澄ませてる。『好き』な力をこれまでで一番引き出してる状態だ。だからこそ、きっと彼は何かをしたんだろう。
「くっ……」
苦痛にゆがむ表情……アンゴラ氏は別に攻撃を受けたわけじゃない。でも、その体に痛みが走ったように空中でぎこちなくなる。でもそれでもここだと気持ちを奮い立たせる。
彼のさらされてる部分の肌が何やら淡く光ってた。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
「はあああああああああああああ!!」
いつの間にか来てた桶狭間忠国も同時にその拳を向けてた。アンゴラ氏は上から下へ、桶狭間忠国は下から上へと二人で挟み込むような状況。意識を失いかけてる悪魔のような女性にそれを防ぐことも回避することもできない。
そのはずだった。けど結果は二人は弾き飛ばされてた。何が起きたのかわかってない二人。桶狭間忠国は上手く受け身をとって素早く立ち上がる。それに対して、アンゴラ氏は転がっていき、それでも立ち上がろうとするが半ばまで立ってその膝が崩れた。
「くっ……動け……動かせえええ!!」
再び彼の肌に光がともる。それを見て、猩々坊主がこういった。
「アンゴラ氏は力を使って自身の体を限界まで開放しておるのではないか?」
「それって力で無理やり体の限界以上の力を引き出してるってことですか?」
「おそらくは」
野々野小頭の言葉に猩々坊主はそういった。そんな無茶な……と皆は思うが、それに反論はできない。だって、今まさにアンゴラ氏は今までにないくらいに素早く動き、そして悪魔とも桶狭間忠国とも対等に動けてるんだ。
付き合いがそれなりにあるチャド氏やミカン氏、それに猩々坊主は知ってる。アンゴラ氏は決して肉体派ではないと。力を覚醒させてようやくその体を鍛えだしたくらいだ。
「おい、なんだあれは?」
「あれ、カメラに映ってるか? 幻覚……じゃないよな?」
「ああ、映ってる……みえてるよちゃんと」
(あれはなんだ?)