「ご、ごめん。ごめんなさい……」
うっうっ……と幾代の目から涙がこぼれる。本題に海のおっさんのおかげで入ってくれた。小頭はそっと海から視線を外す。なにせせっかくキレイな海なのに、でっかいハゲ散らかしたおっさんなんてみたくない。それに海の反射よりもおっさんの頭の反射のほうが……いやこれ以上はいうまい。
日焼け美少女の涙のほうが美しい。きっと全世界がそう思うだろう。
「何が、あったの? 何が起きてるか……わかってるんだよね?」
その言葉に幾代はコクリと頷く。小頭がどうしてここに来たかちゃんとわかってるんだろう。どこまで影響されてるのか、小頭はよくわかってないが、少なくともこの周囲はおかしくなってる。
小頭はそう感じてる。スマホを見ても、別に世界自体はおかしくなってるわけじゃない。色んな所で新たな覚醒者が出てたり、変な化け物の話題があったりするが……それにネットのニュースもなんかいつもよりも聞き慣れない言葉が多いが……ネットだしこんなものか……くらいの感覚だ。
「何があったかよね。でもその前に……小頭に私の事を伝えるわ」
涙を拭って、幾代はそういって小頭を見据える。
「幾代ちゃんのこと?」
一体なんだろう? と小頭は思う。今更告白すること……そこでハッとする。きっと兄のことだ。兄に恋してしまった……という告白だろう。妹の小頭には関係ないが、幾代的には妹にも認めてもらいたいのかもしれない。
「私は……実は……」
そう言って幾代は徐ろに手を合わせて握り込む。そして祈るようにすると、その体が光りだした。
「えっ? え?」
いきなり光りだす体。それを見たら小頭はもしかして幾代ちゃんって超能力者? と察した。でもここでそれを披露する意味とは? と考える。少し大きくなったような身長、そして次第に光が収まっていく。伏せてた顔を上げると……そこには……
「おばあちゃん?」
そう、そこには小頭のおばあちゃんの姿があった。あまりにも信じられなくて、小頭は目を揉んで、ゴシゴシして何回もみる。けど、眼の前にいるのは間違いなくおばあちゃんだった。
「えっ? え? どういうことなの? おばあちゃんがお兄ちゃんを好きなの?」
「え? ええ、あなた達の事、好きよ。勿論ね」
なんか違う、けど違わない返答が返ってきたことで更に小頭は混乱した。