uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

ある日、超能力に目覚めた件 19P

「はあはあはあはあはあはあ……今度こそ死ぬかと思った……」

 

 野乃野足軽は文句を言おうとお湯を見る。するとさっきまでの硬さ? がなくなってるような気がした。

 

「おい、やってくれたな」

 

 さっき忠告しただろうが……と言いたい野乃野足軽。なんとか今までは地球の意思とか言ってたから敬語を使ってたが、流石に二度も殺されかけるとそういう配慮ができなくなったようだ。

 

「おい……」

 

 野乃野足軽はお湯をバシャバシャとする。なにせさっき、あの存在が人形になった時、このお湯を全部使ってた。そしてついさっきお湯を使って野乃野足軽を拘束したときも、お湯全体が固くなってた。つまりはあの存在はお湯全体にその意思を通してると思った。

 だからお湯がまだ残ってるから、野乃野足軽はここに居ると思ったんだ。全部が鼻の穴を通して来たのなら、全部のお湯がなくなってるはずだ……けどお湯にほとんど減少は見られなかった。確実に半分くらいは入ってきたような……そんな感覚が野乃野足軽にはあったんだが……実際見てるとお湯はほとんど減ってない。ならここに居るだろうと思ったのに反応はない。変な声も聞こえては来ない。

 

(ここです)

「ぷはっ!?」

 

 なんかスパアアアン! と腕が勝手に動いて自分の頬をハッ叩いた。一体何が? と野乃野足軽は叩かれたことにも、そして自分の腕が勝手に動いた事にも、そして水の彼女の声があの空間と同じように普通に聞こえてきたのも……その事実を飲み込めないで思考停止してる。

 

(ふむ、やはり貴方の中は馴染みますね)

 

 ポタポタとなにかか野乃野足軽から落ちてた。それがお湯に落ちて赤黒い広がりになっていく。それはどうやら野乃野足軽の鼻血のようだ。一体どれだけの勢いで叩いたら自分自身の力で鼻血を出せるのか……停止してたように見えた野乃野足軽はゆっくりと現状を咀嚼してそしてようやく色々と飲み込めたのか、言葉を発する。

 

「もしかして、俺の中にいるのか?」

(はい、貴方の存在の中に溶け込みました。そもそもそうやって元からここまで来たので、できると思ったのです)

「元から?」

(はい、海で力を使いましたよね? その時です。私は貴方の力のパターンを把握しています。ですからそれに自分自身を合わせたのです。それで貴方の血液のように体を巡っています)

「なんだよ……それ。それでさっき、俺の体を操って……なんで殴った?」

 

 そこでめっちゃ疑問に思った野乃野足軽。別に殴る必要なんてなくない? その疑問がある。

 

(なんとなく?)

 

 その答えにブチ切れそうになる野乃野足軽であった。こいつと居ると命がいくつあっても、体がいくつあっても足りないのではないかという危機感が感じられたんた。

転生したらロボットの中でした(ただし、出ることはできません)運命という世界線を壊せ 656

「いくら願っても教会は来ません。貴方達だけでも……なんてのも幻想です。教会にとっては、庶民もあなた達も変わりなんて無い。奴等は中央にいる民と、地上に居る民を明確に分けてる。そうでしょう?」

 

 コルドバさんは上層部の人間を見渡してそういった。いつもならきっとへりくだってたんだろう。けど今の彼はまっすぐに、それに強い瞳で上層部の人間たちをみてる。そんな彼に憤慨してる奴が「何だその態度は!!」とか言ってるが、もうコルドバさんはコイツラに遠慮する気なんてない。

 なにせコイツラはもうただ権力しか無い使えない人間なのだ。いや寧ろこの状況、もう権力さえも意味なんてない。

 

「自覚してください皆さん。私たちも、この街も、そしてあなた達も、教会からいらないと、もう告げられたのです。その証拠がこの波です。違いますか?」

「そんな……そんな訳はない!!」

「そうだ! ここは地上を維持するために重要な場所なんだぞ!!」

 

 そう言って自分たちが必要とされないわけがないと主張するサーザインシャインインラの上層部の皆さん。そんな人達を見て、「はあ」とため息を付くコルドバさん。それは明らかにコイツラにそのため息を見せつけるようにやったとわかる。それに対して「何だそのため息は!」とか言い出す奴等。

 本当にコイツラは現実ってやつが見えてないとしか言えない。きっと自分が絶対に偉いから、必要とされないわけがない――とかいう謎の理論を展開してるんだろう。けど、そんなコイツラにコルドバさんは現実を淡々と叩きつけてやるよ。

 

「教会がもう、地上を必要としてないとしたら? どうですか?」

「「「なに?」」」

 

 コルドバさんの言葉に上層部の奴等が止まる。そして口々に「いや」とか「そんなバカな」とか言ってる。けどそんな彼等の希望を打ち砕くように更にそうだと言う状況証拠を突きつけるよ。

 

「何よりもまっさきにここ、サーザインシャインインラを切り捨ててるのがその証拠でしょう。ここはあなた達が言った通り、地上の水源です。サーザインシャインインラの水があるから、地上は存続できる。だから真っ先にここを見捨てるということは、教会が地上を見捨てたことを意味する。そう、思いませんか?」

「地上も、我らも、もう必要ないと……そういう事か?」

「そういうことでしょう。そうじゃなかったら、少なくともあなた達が言う通りに、ここは襲わないはずです。教会はもう、地上を活かす気はないんでしょう」

「教会が違う世界への道を模索してるというのは本当ということか」

「我らはその船に……」

「乗ることは出来ないということですよ。彼等は中央で特権に居る者たちでその世界に行くつもりでしょう……これでもまだ、教会に義理立てしますか?」

 

 その言葉に皆さん言葉がない。自分が切り捨てられた……その事実を受け入れることが出来ないらしい。老人たちにはずいぶんと嫌な現実だったんだろう。けどまあ私から見たら「ザマァ」でしかないけどね。

ある日、超能力に目覚めた件 18P

「ちょっと足軽! いつまで入ってるのよ! 小頭も御飯食べずに待ってるよの!!」

 

 そう言って風呂のドアを勢いよく開けてくるのは野乃野足軽の母親である。さっきから呼んでたが、野乃野足軽が全然返事をしないから心配半分、怒り半分でそんな行動に出たと見える。そして開いたドアの向こうには一瞬なにか見えづらくて、野乃野足軽の母親は「ん?」と思って目をこする。

 湯気? とも思ったけど、なんか水越しに浴室を覗いてたみたいな感じに見えたような? とか思ったが、次に見た時は足軽が湯船に使ってるのが普通に見えた。だから気の所為だったのかとおもった。

 

足軽、あんた返事くらいしなさい。心配するでしょうが!」

「わかってるから、早く出ていってくれよ!」

「全く、恥ずかしがることなんて無いでしょうが。母親なんだから!」

「母親でもなんでも、恥ずかしいだろ!」

 

 そう言われて、安心して母親は出ていった。ちゃんと「早くしなさいよ」という声を残して。

 

「危なかった~」

 

 そう言って野乃野足軽は湯船に沈む。こうやってると普通のお湯である。けど頭には直接変な言葉が伝わってくる。きっとさっきの存在が『危なかったですね』とか言ってるんだと野乃野足軽は思ってるんだが、残念ながら伝わらない。

 さっきまで……あの宇宙のような空間に居た時は言葉をかわすことが出来てたのに……一体これはどういうことだろうか? と疑問に思う。

 

「今の状態じゃ、アンタの言葉わからないや……とりあえず戻ってこれたし、今度は変なことは今はしないでください」

 

 お湯に向かってそんな事をいう野乃野足軽は変なやつだが、誰も見てないからいっかという感じだ。再び心臓を止められたら、もう一度生き返れるかなんて保証なんてないんだ。だから野乃野足軽はまずは水の彼女にそう、念を押しておく。なにせ常識というも物がない存在である。再びなにかの間違いで殺される可能性はある。

 だからまずはそれを防ぎたかった。だって本当になんとか、力を使って心臓を無理やり動かすことで戻ってこれたんだ。できるかどうかなんてわからなかった。たまたま成功しただけ。

 

「ちょっと……」

 

 変なことをしないで……といったはずだが、なんか野乃野足軽はお湯から出られない。お湯から出られないなんてどういうことかと思うかもしれないが、野乃野足軽もわかんない。なんかお湯が張り付いてるって感じだ。そう思ってると、お湯から顔みたいなのがでてきた。そしてなにやら言ってる。

 多分だけど、野乃野足軽に不満を伝えてるんだろう。どうやら野乃野足軽には彼女の感情的な物は伝わってるようだ。

 

「だってしょうがないじゃないですか。貴方をそのまま連れて出歩くなんて出来ないですよ。お湯人間なんて見たら家族がびっくりします」

 

 びっくりで済むかどうかも分かんない。野乃野足軽は自分の家族はおおらかな方だと思ってるが、流石に夕飯を待ってる家族の前に彼女を連れて行って無事で済むなんて思ってない。そこまでの楽天家ではないだろう。普通に驚くはずだ。

 

「なにか入れる容器でもあればいいんですよね?」

 

 そんな事言ってた気がする。とりあえず自分だけ出て、小さな容器を持ってきて、それに入ってもらえばいいかと野乃野足軽は考える。浴槽の容量まるごと入れる容器なんてあるのかなんて?  そんな物がないのは流石に野乃野足軽もわかってる。けど、きっと不思議パワーでどうにかできるんじゃないかと思ってる。

 

「ん? ちょっ!? なんかイヤな予感しますよ」

 

 不穏な感情……というか、なんか『良いことを思いついた』的な感情が流れ込んできた。それは野乃野足軽にとってはなんか嫌な予感がしたから止めようと思ったんたが、彼女はそんなの聴く暇もなく野乃野足軽の鼻の中に流れ込んできた。

 

「あばばばばばばばばばばばばばばば!?」

 

 鼻の穴に大量の水を流し込まれた経験がある人はいるだろうか? それは一種の拷問の様な苦しみだったと後で野乃野足軽は語った。

転生したらロボットの中でした(ただし、出ることはできません)運命という世界線を壊せ 655

「皆さんももうわかってるはずです」

 

 そう言っておじさん『コルドバ』さんはこのサーザインシャインインラの上層部の面々の所にいた。やっぱり彼はこのサーザインシャインインラの運営部分のかなり偉い部分に居たから、戻ってきた彼を上層部の奴等は歓迎したみたいだ。最初はね。

 コルドバさんはお仕事的には偉い立場だが、地位的には偉くはないらしい。なんかややこしいが、叩き上げ? 的な感じなんだろう。上層部の連中はある程度の使える奴等を下において、自分たちは楽をしてる。ようは上層部の奴等が楽をするために据えられた椅子に座ってたのがコルドバさんと言うことだ。

 上層部が何もやらないからサーザインシャインインラの実質的な経営やら運営はコルドバさんがやってたも同然なんだ。彼が宮殿に戻ってきて、周囲の人達は喜んでいた。何をしたら良いか、どうやら上層部の連中は方針も出さなかったらしい。

 奴等に面会するまえに少し軽く現状を聴いてたが、どうやらこの宮殿内部ではほぼ情報を把握してない――という感じだった。上層部とその息の掛かった奴等はそれこそ狂ったように「教会が……教会が」といってたそうだ。

 あの橋の手前に設置された砲台の事もここの普通の職員の人達はしらなかった。どうやら上層部の一人の独断みたいな? そんな感じだったらしい。指針がなくなって、指示もなく、ただここまで砂獣がやってくるのを手をこまねいて待つしか無い……そんな状態だったらしい。宵が終わって明になったときに金色の鬼が咆哮を放ってた筈だが、それから慌てるしかしてなかったらしい。一応軍は動かしたけど、それだけらしい。その後、軍がどうなったかも知らない。

 そんなのある? と思うかもしれないが、軍なんてのはここサーザインシャインインラでは本当に飾りだったんだ。少なくとも、上層部の連中はそう思ってる。上層部は宵が終われば今度こそちゃんと教会と連絡を取れる……と本気で思ってたのか……今更絶望を感じてる。それて戻ってきたコルドバさんをみてまず開口一番に言ったのが「なんとかしろ!」――だったからね。

 もうね、どれだけクズなのかと。あの時コルドバさんはコイツ等殴っても悪くなかったとも思う。そんな一方的な上層部の一人を説得して、とりあえずサーザインシャインインラの上層部の連中を集めて、話し合うことになって今に至る。

 無駄に豪華て広い部屋。調度品から今座ってるソファーにいたるまで、庶民のそれとは違う物で埋め尽くされた部屋。そして上層部の連中は一人一人若い女性を侍らせている。それを見てコルドバさんは「こんな時に」と思う。まあ私も思ってる。奴等は私の事を認識してるけど、どうでも良い存在と思ってるのか、全然触れてこない。きっと自分で考える頭がなくなってるんだろう。可哀想……とは思わない。愚かだなって思う。職員の人達はまだ私に関心があったのに。 

 職員の方たちにはコルドバさんが言っていつでも動いてもらえるようにしてる。私たちの目的は上層部の連中に現実を突きつけて、彼等が持ってるであろう教会の道具を出させることだ。実際何を持ってるのか、使えるものがあるのかはわからない。でも何かが有るはずだと、コルドバさんは思ってる。

 実際私もなにかあるだろうとも思ってる。だって砲台みたいなのがあったのだ。他にもきっとあるたろう。それに実際ここを見捨てる気が無い時は教会だって本当にここを守る気はあったと思う。ということは、そのためにも何かを置いてることは考えられる。

 だってピンチになった時に中央からサーザインシャインインラに何かを運ぶ時間は無いだろう。転送装置とかあるなら別だが……流石にそれはないと思う。

 

「ここサーザインシャインインラはもう教会から見捨てられたんです」

「そんな事があるわけない!」

「我らがどれたけ教会に貢献したと思ってる!!」

「そうだ!! せめて我らだけにでも助けが来るはずだ!!」

 

 そんな言葉を堂々吐く奴等。コイツ等はこの街のことなんて微塵も思ってなんかない。ただ我が身可愛さだけなのが心底溢れ出てる言葉に、明らかにコルドバさんは怒ってるが、奴等がそれに気づくことはないようだ。

ある日、超能力に目覚めた件 17P

「それで……えっと貴方は一体なんで俺に接触してきたわけ……でしょうか?」

 

 なんか地球そのものみたいな存在と聴いた野乃野足軽は、途中からラフに喋るのはまずいのでは? と思って、敬語になった。

 

(私が個人を認識することなんてなかった。だから初めて認識した個人である貴方に興味があったのです。丁度海まで来てくれましたし)

「ならあそこで現れればって……それはまずいか」

 

 あの場でもしもこの存在が現れていたらどうなっていだろう……と野乃野足軽は考えてそれはまずいなって思った。だってあそこは外で時期じゃないと言っても海にはそれなりに人が居た。トレーニングする人、散歩をする人、そして海に物思いにふけに来る人……海はいつだって人を受け入れているんだ。

 だからあの場で現れていたら、多少なりとも騒ぎになってたはずだ。そして今の時代、誰もがカメラを持ってる。そうスマホである。スマホで写真撮られてアップされた日には……最悪だ。そう考えるとこのタイミングはベストだったのかもしれないと野乃野足軽は考える。

 

(私に流れ込んできた記憶、そして海で力を使いましたよね? それをもって貴方が私の記憶に居る人間だと確定しました)

「それで? 貴方は一体俺をどうするんですか? 殺す気は本当に無いんですよね?」

(ええ、アレは悲しいすれ違い。私はただ、関わっていたいのです。初めて出来た認識とこの感情。それに寄り添ってみてもいいのではないかと思ってます)

「と言うと?」

(私がそばに居る許可をください)

「ある意味で貴方は地球の意思なら、誰のそばにも居るのでは?」

(こうやって顕現してると私の意識はここに集中されます。誰のそばというわけでもありません。それにいつもは誰も私を意識なんてしませんよ。今まではそんな欲さえなかった訳ですが、今はこうやって話すのも悪くないと思ってます)

 

 のっぺらぼうの顔だけど、野乃野足軽には彼女が笑ってるように見えた。そして考える。彼女は地球が出来てからずっと、一人でいたんだ……と。地球の年齢が実際何億際だったか野乃野足軽は詳しくは知らない。けど軽く億はいってたはずだ。

 億年なんていう時間は数十年間しか生きてない野乃野足軽には想像もできない程に途方もない時間だ。だから軽く共感なんて出来ない。ただ漠然とそれは寂しいなって思うだけだ。

 自分がもしも生まれてこの方孤独に生きてた来てたら……それこそ家族も何もいなくて、沢山の人達は居るけど、自分だけは全く存在しないかのように振る舞われてたらどうか……それはかなり酷いいじめでは無いだろうか? 

 

「そばにいるとはどういうことでしょう? その状態で? ということですか?」

(とりあえずは存在は消しておきます。僅かな水を携帯しくれれば、それを伝って私は貴方の周囲を観察できます)

「それって俺のこと常に見てる……いやそんな気はないですよね」

 

 ただただ彼女は純粋にそれを言ってるだけだと野乃野足軽は思い直す。なにせ彼女は純粋である。監視することになるなんておもってもいない。

 

「とりあえず……夜中とかは見るのやめてもらっていいですか?」

(人間は寝るという行為をするのですよね。わかってます)

 

 なんかちょっと顎を上げてドヤってる彼女。野乃野足軽にもプライベートな時間が欲しくて言ったがまあそれでもいいか――と別に訂正はしなかった。

 

「それで、ここからどうやって戻ればいいんでしょうか?」

(そうですね。心臓を動かせば覚醒できると思います)

「なるほど! ってそれ死んでる!? 死んでるんですけど!?」

 

 やっぱりここは死後の世界じゃねーか……と野乃野足軽は叫んだ。

転生したらロボットの中でした(ただし、出ることはできません)運命という世界線を壊せ 654

「この力があれば、もっと沢山の人達を救うことができるはずなのに……何故に教会はそれをさせてくれないのでしょうか? 誰もがこの力を使えれば、きっともっと安全に日々を過ごすことができる」

 

 メリアスさんは回復魔法を受けながらそんな事を漏らす。自分自身のために力を求めるんじゃなく、誰かの為に……沢山の人達の為に真っ先にそう思えるのは彼の人間性を表してると思う。本当に立派な人だ。

 勇者の自分も見習わないと……とも思うが……この世界では自分が守るべき人たちは……いや、かかわった人たちは勿論守りたいと思ってる。けど、実は自分はもう勇者という立場に縛られたくはないとも思ってるというか。

 そんな自分は彼を見てるとかつての自分を見てるようで、眩しく感じる。ただ純粋に誰かの為に……そう思ってた時期だってあるから。

「教会を養護する気はないですけど、魔法という力は便利だけど、やっぱりどんな力も使い方次第ですから。どんな力も悪いやつが使えば悪い力になる」

「確かにそうですね。それには自制が必要だし、教育もきっと必要になるんでしょう。でも我々はその悪い奴らに力を独占されてる状態では?」

「確かに……それはまずいですね」

 

 いや本当に。そのバランスが全く取れてないのがこの世界だよね。いや一応はこの世界はここまで生存できてるから、バランスは取れてるのか? いやでも……それって結局は教会の裁量だったのかもしれない。

 なにせ今回、奴等は波までも起こしてる。もしもだ。もしもこれまで砂の下に沈んでいった街とかが教会が起こした波で沈んでたとしたら……それは奴等許されないことをやってたことになるぞ。だって波ってこれまでは自然発生するものだと思われてた。

 でも今回のことで教会は波までも起こせると……それがわかったんだ。これまでの犠牲、それの生贄になってきた人たち……それら全ては教会の思惑……そして計画の中だったとすれば……それは……

 

「とりあえずはこの波を乗り越えないといけません。今はそれだけに集中してください。今はもう、あなた達だけが頼りです」

「そんな我々なんて、勇者様達が居なければどうにも……それにジー殿が砂獣の襲撃位置から弱点までも的確に教えてくれるので助かってます。本当の英雄はあなた達です」

 

 そういってなんかメリアスさんが頭を下げると、その部下の人達も自分に向かって頭を下げる。イヤ本当にやめてほしい。自分はこの世界でも勇者になるなんてイヤだ。その世界の勇者はその世界の者がやるべきだと思う。

 だって自分はそのうちこの世界を去る。それは決定事項だ。ここにとどまる選択肢なんて無い。だからその時、きっとこの世界の人たちは絶望とまでは言わなくても、がっかりするだろう。でもこの世界の者がこの世界の希望になってれば、そんなことは起こり得ないわけで……だからここで勇者になるのは、彼でなくちゃいけないとおもう。そういう風に演出してもらうようにG-01殿には言っておこう。

 計画では自分の活躍を映像で様々な場所にみせるってことだったが、代わりが居るんなら自分的にはそれに越したことはない。

 

『第三波が迫ってますよ。それと上層部はこっちにつくみたいです』

 

 そういうG-01殿。ようやくここサーザインシャインインラの上層部は教会に見捨てられたと自覚したらしい。

ある日、超能力に目覚めた件 16P

「本当の……本当に? 俺を騙そうとしてるんじゃ?」

(そんな事をしてどうなると?)

「いや……希望を持たせておいて『実は死んでまーす。生き返れませーん』とかやる気なんじゃない?」

(私をなんだと思ってるんですか……)

「いきなり襲いかかってきた敵だけど……」

 

 全くもってその通りのことを言われて、何も返せなくなる水でできた女性。野乃野足軽の言ったことは何も間違ってないからね。実際この女性のしたことはいきなり町中で出会い頭に首を絞められた……みたいなものである。

 いやお風呂でのことだったし、実はもっとたちが悪いかもしれない。実は自分にストーカーが居て、それが風呂まで侵入してきて、首しめられた――みたいな? 文章にするとヤバさが際立つ。

 

(それは悲しい行き違いです。私も生命体と接触するのは初めてだったのです)

「だからっていきなり首締める?」

(それは……すみませんでした。それと貴方がいうアクアという存在も)

「生きてるんなら……まあ……アクアはそのアンタから分離とか出来ないの?」

 

 せっかく自身の力で生み出した存在であるアクアがもう居ないとなるとちょっとさみしい野乃野足軽。だからそんな事を聴いてみた。アクアだってよくわからない存在だったから、もしかしたら……とか思ったんだろう。

 

(それは無理です。私自身が私の事をよくわかってません。色々と私も不慣れなのです)

「この星そのものみたいなものだって言ってなかったっけ? それなら何億歳とか何では?」

(こんな風に存在を主張したのは初めてですよ。私はただ眺めてるだけだったのです)

「それって……もしかしてあんた……いや貴方様は神様とか呼ばれてる存在では?」

(それはどうでしょうか? 私は生命体に寄り添ったことはありません。私はこの星の意思みたいなものなので)

「それじゃあ……もしかして今の人類にキレてるとかは? 人類が増えすぎて星を滅茶苦茶にしてるから出てきたとか……」

(人類はそんなに増えてましたか? キレてるとはなんですか?)

「ああ……いや、物語ではよくある設定なんだけど……」

 

 なんか別段彼女は人類に対してヘイトもたまってなさそうだった。ちょっと自身の中でワクワクする質問をしてた野乃野足軽だけど、ちょっと拍子抜けした。どうやら野乃野足軽は人知れず人類の危機を救ってみたかったらしい。

 まあけどそういう妄想は男の子なら一度はやるだろう。野乃野足軽も例外ではなかったと言うことだ。