「それで……えっと貴方は一体なんで俺に接触してきたわけ……でしょうか?」
なんか地球そのものみたいな存在と聴いた野乃野足軽は、途中からラフに喋るのはまずいのでは? と思って、敬語になった。
(私が個人を認識することなんてなかった。だから初めて認識した個人である貴方に興味があったのです。丁度海まで来てくれましたし)
「ならあそこで現れればって……それはまずいか」
あの場でもしもこの存在が現れていたらどうなっていだろう……と野乃野足軽は考えてそれはまずいなって思った。だってあそこは外で時期じゃないと言っても海にはそれなりに人が居た。トレーニングする人、散歩をする人、そして海に物思いにふけに来る人……海はいつだって人を受け入れているんだ。
だからあの場で現れていたら、多少なりとも騒ぎになってたはずだ。そして今の時代、誰もがカメラを持ってる。そうスマホである。スマホで写真撮られてアップされた日には……最悪だ。そう考えるとこのタイミングはベストだったのかもしれないと野乃野足軽は考える。
(私に流れ込んできた記憶、そして海で力を使いましたよね? それをもって貴方が私の記憶に居る人間だと確定しました)
「それで? 貴方は一体俺をどうするんですか? 殺す気は本当に無いんですよね?」
(ええ、アレは悲しいすれ違い。私はただ、関わっていたいのです。初めて出来た認識とこの感情。それに寄り添ってみてもいいのではないかと思ってます)
「と言うと?」
(私がそばに居る許可をください)
「ある意味で貴方は地球の意思なら、誰のそばにも居るのでは?」
(こうやって顕現してると私の意識はここに集中されます。誰のそばというわけでもありません。それにいつもは誰も私を意識なんてしませんよ。今まではそんな欲さえなかった訳ですが、今はこうやって話すのも悪くないと思ってます)
のっぺらぼうの顔だけど、野乃野足軽には彼女が笑ってるように見えた。そして考える。彼女は地球が出来てからずっと、一人でいたんだ……と。地球の年齢が実際何億際だったか野乃野足軽は詳しくは知らない。けど軽く億はいってたはずだ。
億年なんていう時間は数十年間しか生きてない野乃野足軽には想像もできない程に途方もない時間だ。だから軽く共感なんて出来ない。ただ漠然とそれは寂しいなって思うだけだ。
自分がもしも生まれてこの方孤独に生きてた来てたら……それこそ家族も何もいなくて、沢山の人達は居るけど、自分だけは全く存在しないかのように振る舞われてたらどうか……それはかなり酷いいじめでは無いだろうか?
「そばにいるとはどういうことでしょう? その状態で? ということですか?」
(とりあえずは存在は消しておきます。僅かな水を携帯しくれれば、それを伝って私は貴方の周囲を観察できます)
「それって俺のこと常に見てる……いやそんな気はないですよね」
ただただ彼女は純粋にそれを言ってるだけだと野乃野足軽は思い直す。なにせ彼女は純粋である。監視することになるなんておもってもいない。
「とりあえず……夜中とかは見るのやめてもらっていいですか?」
(人間は寝るという行為をするのですよね。わかってます)
なんかちょっと顎を上げてドヤってる彼女。野乃野足軽にもプライベートな時間が欲しくて言ったがまあそれでもいいか――と別に訂正はしなかった。
「それで、ここからどうやって戻ればいいんでしょうか?」
(そうですね。心臓を動かせば覚醒できると思います)
「なるほど! ってそれ死んでる!? 死んでるんですけど!?」
やっぱりここは死後の世界じゃねーか……と野乃野足軽は叫んだ。