『※※※※※※※※※※※』
わからない何かが野乃野足軽の頭に響いてた。それがさっきはいきなりだったから恐怖心を内側から呼び出して思わずのけぞってしまった。けど今回は来るとわかってたから、野乃野足軽は耐えている。それでも……彼の顔には汗がひどく伝ってた。
「じ……自分はただ……アクアを……探して……」
誰に言ってるのかわかんないような、そんな言葉をなんとか絞り出すのがやっとの野乃野足軽。野乃野足軽はソレが何を言ってるのかなんてわかんないが、とりあえずなにか伝えないとと思ったようだ。
そしてそれからも、意味不明な言葉は野乃野足軽の頭に響いてた。何かが会話してるようにも聞こえてる。最初は一人の言葉なのかと思ってた野乃野足軽だが、なんだか複数いるようにも聞こえてくる不思議な声。そしてどんどんと力が抜けてるのがわかった。離れよう……離そうとしても、その意志に野乃野足軽の体は応じない。
まるで海から伸びてる見えない手に全身が絡め取られてるみたいな……そんな感じを野乃野足軽は感じてた。
(このままじゃやばい)
と頭では思っている野乃野足軽。どんどんと力が吸い取られていってて、もしかしたらこのまますべての力を吸い取られるかもしれない。そして完全に空っぽになった時……どうなるのか……野乃野足軽も知らない。だからこそ恐怖がせり上がってくる。もしかしたらその先にあるのは『死』とかいう考えがちらつく。
いつもの疲労感を知ってるから、それが決してありえなくはないじゃないか……と思える。
(逃げたい……逃げ出したい)
そう思っても、海の力は強大だった。野乃野足軽にはどうしようもない。引きずり込まれる……とかは今のところ無いが……このまま力を使い続けたら間違いなくぶっ倒れることは野乃野足軽は明確にわかる。
その時だった。
「野乃野君!!」
後ろから衝撃が走って、後ろに引き戻された。どうやっても動けない……そんなことを思ってたはずなのに、野乃野足軽は簡単に後ろに倒れた。砂の上に倒れたはずだけど、砂の感触はしない。むしろなんか温かいとさえ思った。野乃野足軽の腰に回された腕、そして背中に感じに吐息。その暖かさで野乃野足軽は誰かを下にしてると気づいた。
「ごっ! ごめん!!」